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映画【間宮兄弟)】は江國香織の同名小説を森田芳光がメガフォンをとって映画化したものです。
特段劇的な事件は何も起こりません。間宮兄弟の日常が彼らを取り巻く女性たちとともに何気なく過ぎていきます。
間宮兄弟を取り巻く女性たちが抱える、恋愛を中心とした日常的な問題は我々の周りにも普通に起きそうなことばかりです。
一方間宮兄弟は我々と少し違った世界にいます。子供頃の兄弟の日常をそのまま大人にした感じで、普通はありそうもない形といえます。
映画【間宮兄弟】を巡る様々な「なぜ」を読み解きつつ、間宮兄弟を通じて人の生き様についても考察してみましょう。
間宮兄弟を取り巻く女たち
間宮兄弟の日常は非常にシンプルです。あるのはナチュラルな思いやりと淡い恋心だけで、大きな野望も抱えている深刻な問題もありません。
しかし彼らを取り巻く女性たちはそれぞれそれなりに深刻な問題を抱えているのです。
葛原 依子
依子は徹信が務める小学校の30過ぎの独身女性教諭です。年齢が年齢ですから当然結婚を焦っています。
彼女は間宮兄弟たちの部屋で直美とともにゲームなどにこうじます。
その中で彼女はいわゆる「おんな」を使って自分の立場を有利にする本性を露わにしていきます。
徹信は依子に淡い恋心を抱きますが、所詮彼女は間宮兄弟たちとは別世界に生きる女性でした。
映画では彼女なりのパートナーを見つけ、彼女なりの人生を歩んでいくことが暗示されています。
本間 直美
直美はレンタルビデオショップでアルバイトをする女子大生です。明信は彼女に淡い恋心を抱いていますが、中々近づく切っ掛けが掴めません。
彼女の生き様は打算的な自分自身に正直です。現在の恋人とも間宮兄弟たちとも自分なりの距離感を維持できています。
彼女は恋愛については熟練者に違いありません。明信の思いもわかりすぎるほどわかっています。
それでも暇つぶしに間宮兄弟の部屋に遊びに行ける余裕があるのです。
彼女はこれからも抜かりなく安定した生活を見つけていくことでしょう。
本間 夕美
夕美は直美の妹の女子高生という設定ですが、間宮兄弟を巡る女性たちの中では、比較的彼らの感性に近い存在です。
もちろん彼女の人生はこれから山あり谷ありでしょうが、しばらくは間宮ワールドで楽しめるだけの素質はあるように見えます。
大垣 沙織
沙織に対する徹信の思いは素直すぎて可愛そうです。
彼女は自分には夫とは別の浮気相手がいながら、新しい恋人との結婚のために離婚を迫る夫の要求を拒否してみせるしたたかさがあります。
徹信に対する仕打ちは思いやりの片鱗もありません。駆け引きすらする必要がないと踏んでいるのです。
徹信にとっては思わせぶりな態度で生殺しにされるよりは、その時はつらいですがかえってサッパリするかも知れません。
ラストシーンのメールは誰から
ここまで間宮兄弟たちを巡る女性たちを見てくれば、ラストシーンで兄弟たちがニンマリする徹信へのメールの相手は想像に難くありません。
徹信の携帯に自分の着メロ設定をする夕美の姿にその伏線があるのです。