しかも、素材は未知のものではなく、現代の私たちが知っている素材ばかりであることからも、パーツに限界があることが予想できます。
となるとアナほどの戦闘スキルのある人のかかと落としを、シュライクに通用させることは十分可能です。
寄せ集めのパーツ
何百年も存在してきたシュライクのパーツは、寄せ集めのパーツです。
8歳のヘスターを育てている時期、シュライクはさまざまな「捨てられた物」を集めていました。
集めたマシンの中に、自分を見ていたとおもう
引用:移動都市/モータル・エンジン/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
これはつまり、シュライク自身も「ガラクタ」の集まりであり、シュライクの体を構成するパーツも元は「ガラクタ」だから。
そう考えると、寄せ集めたパーツでここまでよくやって来れた、という印象すらあります。
何百年も時間が経った、寄せ集めパーツであれば、アナのかかと落としで破壊可能でしょう。
ヘスターへの愛
シュライクが停止した外部的要因がアナであれば、内部的要因はヘスターにあります。
シュライクは間違いなくヘスターを愛していました。
思い出すヘスターの顔
ここで言う「愛していた」というのは、恋愛感情というよりは人としての愛情です。
シュライクが停止する直前、仰向けの状態で思い出していたのは、ヘスターを引き取ったころの、ヘスターの笑顔でした。
死の直前に思い出すほど、シュライクにとってはヘスターが愛すべき人だったのです。
おまえは…こいつを愛しているのか?
引用:移動都市/モータル・エンジン/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
トムを踏みつけるシュライクに対して、ヘスターは涙ながらにトムを助けるようお願いしていました。
ヘスターが愛すべき人を見つけられた。そう思った時、シュライクは自分の役割の終わりを感じたのです。
そう思った時、シュライクは生きること(存在すること)に執着がなくなってしまいました。
つまりシュライクにとって、ヘスターは生きる上での目的だったのです。
魂のかけらは残り続けている
本来シュライクのように改造されてしまうと、感情も記憶もなくしてしまいます。
でも彼の中の奥底に残っていると思う。人間だった時の記憶が。家族がいたんだと思う
引用:移動都市/モータル・エンジン/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
これはヘスターが思う、シュライクという人物像です。このセリフから、シュライクにも人間らしい感情があることが分かります。
わずかながらにあるこの感情を、シュライクはこれまで否定してきましたが、ヘスターによっていつの間にか大きくされていたのです。
その感情が、ヘスターの必死の行動により完全に引き起こされた結果、「ヘスターのため」になる行動をシュライクは考えました。
こうして生きることへの執着がなくなり、シュライクは機能停止をするのです。
「自己流」でヘスター救おうとしていた
作品の中では、ヘスターへ復習をしようとしているかのように見えるシュライク。
しかし、実際にヘスターを傷つけるようなことはしていません。シュライクはヘスターを「自己流」で救おうとしているのです。
あたしを連れ去り。育ててくれた。自己流で
引用:移動都市/モータル・エンジン/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
「自己流」で接するシュライクは、ヘスターが自分のようになって感情をなくすことがヘスターを救うための手段と考えました。
傷ついた小さな頃のヘスターはそれを望んでいたし、それが二人の約束です。
約束という言葉によって、ヘスターが義務を破ったかのように思えますが、その裏にはシュライクのヘスターに対する愛情がありました。
シュライクは、ヘスターの傷ついた心を自由にするため、「自己流」にその改善を図りたかっただけなのです。
約束からの解放
作中シュライクは、ヘスターが約束を破ったことを強調します。しかし機能が停止する直前、シュライクはヘスターを約束から解放しました。
おまえを解放しよう。おれとの約束から。
引用:移動都市/モータル・エンジン/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
シュライクがそう思えたのは、ヘスターに対する愛情を思い出し、ヘスターがトムへの愛情を見せていたから。
約束がなくなったシュライクには、今後生きる目的がありません。そう感じたとき、シュライクは機能停止を拒まないのでした。