そう、最初は長道を蹴落とすつもりだったのが判断を間違えて星白を死なせたのです。

表面上は平気で振る舞っていても内心は罪悪感で心が埋め尽くされていました。

結果として彼はPTSDに陥り、見事な因果応報としてかえってきた形になります。

味方の弱点となるものを敢えて用意する奇居子の卑劣さが窺えるでしょう。

胞衣=女性器のメタファー

2つ目に胞衣はここで赤色という色も含めて女性器のメタファーとして描かれています。

その女性器から新に生まれ出てきたエナ星白は単なる星白の生まれ変わりではありません。

そう、1度奇居子の中で生まれ直した新しい命として長道達の前に出てくるのです。

この辺りがかなり凝った設定であり、「エヴァ」の使徒をより洗練させた設定でしょう。

それに長道たちが対峙するのですから正に形を変えた男女のラブロマンスなのです。

融合個体を産むため

シドニアの騎士 ラバーストラップ ラバスト 白羽衣つむぎ

実はこの話には続きがあり、エナ星白は融合個体を産むために利用されます。

誰との子かというと落合に乗っ取られた岐神との子供・白羽衣つむぎです。

皮肉なことに星白のことでPTSDを発症した岐神は落合に利用されました。

ここで面白いのはエナ星白が安易な悪の存在ではないということでしょう。

人類を超えた超人類の最初の誕生の瞬間であったといえるかもしれません。

その為に1度星白は奇居子に食われるという喪失を描く必要があったことが窺えます。

「性」を超える物語

性を超えるダンサー ディディ・ニニ・トウォ

こうして見ていくと本作は「」を超える物語であることが分かって頂けるでしょう。

人間の性には生物学的性(セックス)と社会学的性(ジェンダー)の2種類があります。

先達の作品群は男女の関係に焦点を当てつつも「男らしさ」「女らしさ」を守っていました。

本作ではイザナという中性的なキャラの登場もあってその壁がどんどん崩されていきます。

もうここに来て「男らしさ」「女らしさ」といった概念すら意味を成さなくなっているのです。

星白の死とエナ星白の登場はその壁を破り新たな可能性を開く第1歩だったのではないでしょうか。

命の物語

命と絆の法則 魂のつながりを求めて生きるということ (きずな出版

本作は単独で見るよりも原作漫画やテレビシリーズとの兼ね合いで見るとより理解が深まります。

様々なSF設定が用いられていますが、核にあるのはあくまでもシンプルなラブロマンスです。

そしてそのラブロマンスは性の壁を超えもっと奥深い「」という所に迫っていきます。

単なる過去の作品群の解体と再構築のみならず、それを通して根源的な命題へ挑んでいるのです。

だから集大成というよりはここからが寧ろ本当のスタートという位置づけの作品でしょう。

しかし決して嫌らしさはなく万人にお勧めできる物語となっているのではないでしょうか。

SFアニメはまだまだ可能性を秘めていることを世に知らしめてくれた名作です。