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劇場版『PSYCHO-PASS』はサイコパス製作委員会による2015年公開のSFクライムアニメ作品です。
監督は塩谷直義、ストーリー原案・脚本を虚淵玄と深見真らテレビ版のスタッフが手がけています。
更に作画の総監督が恩田直之、キャラクター原案を天野明が担当しクオリティの高い作品に仕上がりました。
物語はアニメ版1期・2期の後日談という形で狡噛慎也と常守朱が再びバディとして組むことになるお話です。
かつて国を守る側だった人間が今度は立場の違いから国を攻撃する側になってしまう展開は手に汗握ります。
本稿では狡噛がテロ支援をする理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、シビュラシステムの関係や時折現れる槙島の意味も併せて読み解きます。
国家が個人を守れない時代
本作において特に強く描かれているのは「国家が個人を守れない時代」ではないでしょうか。
サイコパスシリーズの後日談たる本作においては国家がもはや国家として機能しなくなっているのです。
皮肉にも人間を管理するシビュラシステムが整っている日本しか国家が個人を守れていません。
しかし、問題はその管理する側である国家がもし不正や間違いを犯していたらどうするのでしょうか?
その時に守られることに慣れ飼い殺しにされている人々は自分で立ち上がる力を持っていないのです。
そのような時代において改めて国家と個人がどのように向き合っていくかを本作は描いています。
これは来たるべき未来の人類へ向けたSFを通した1つの寓話だといるでしょう。
狡噛がテロ支援をする理由
本作ではかつて国家側にいた狡噛が反旗を翻してそれと正反対のテロを行う側へ回ります。
常守はそんな狡噛の真意を追いかけているのですが、彼は何故テロ支援を行うのでしょうか?
国家の歪み
1つ目に狡噛はテロリズムが国家の歪みで生じたことを理解しているからです。
確かにテロリズムは決して社会的に許された行為ではなく、罪なき人々を恐怖に陥れます。
しかし、火のない所に煙は立たぬようにテロリズムは無実で無口な人々の心の叫びです。
それが非合法な武装集団という形で独善性を帯びて国家に反旗を翻してテロリズムになります。
狡噛はかつて公安という体制側にいた人間だからこそ尚更のことそれが見えるのでしょう。
そんな彼の行動はかつての同僚たる常守にも伝わっていきます。
ニコラス達を倒す
2つ目に狡噛は今回の原因となっている親玉ニコラス達を倒すことにありました。
ニコラスは体制側でありながら国に歪みをもたらした本作の事件の元凶だったのです。
そのことにいち早く勘づいていたからこそ、ゲリラを立ち上げ倒そうとしたと明らかになります。
しかし、もしそのことが日本の公安に知られれば狡噛は犯罪者扱いされ処分されかねません。
国家機密に関わる重要なことなので決して迂闊なことが出来ない危険な状況にありました。
だからこそ常守が来ても決して安心することもなくただ1人戦い続けるのでしょう。
国民の解放
最終的な目的は国家の歪みに苦しめられている無実な国民の解放だからです。