自分を親身になって心配してくれる幼馴染の明日香との約束であれば尚更です。
現実の厳しさ
そして3つ目に、現実の厳しさもまた表わしているのではないでしょうか。
拓也の人生はいわゆる田舎者が夢を見て上京して失敗・挫折を経験したパターンです。
明日香はそんな拓也の人生を「負け犬」だと評しており、痛々しく思えるでしょう。
しかし、明日香こそ上京を夢見ながら、結局地元の農協にいる道を選んでいるのです。
式典にしてはとても切なく悲しく、晴れない寂しさが画面全体を覆っています。
それは2人を囲む現実がそれだけ厳しいものであるということの証左でありましょう。
最後の手紙の意味
そんな拓也は実家に戻った後、両親が実は拓也の隠し事全てをお見通しだったことを知ります。
両親の深い愛情を感じた彼は両親にたった1文のシンプルな手紙を残していきました。
長靴は使うから捨てないで
引用:家族のはなし/配給会社:KATSU-do
ここではこの手紙に込められた意味を見ていきましょう。
実家を継ぐ
真っ先に想像されうる意味は拓也が実家を継ぐということではないでしょうか。
長靴とは何のことかといえば勿論リンゴ農園で仕事する時に使う長靴のことです。
それを使うのですから、拓也は遂に実家を継ぐ決心をしたことが窺えます。
ここで大事なのは直接的ではなく間接的な表現を用いていることでしょう。
素直に「実家を継ぐ」といわない辺りにやや斜に構えた拓也の照れが見えます。
しかし、両親からすればこれ以上なく嬉しい言葉だったに違いありません。
自由意志による決意
2つ目に、この手紙が拓也の自由意志で書かれたものだということです。
両親に強制された訳でも唆されたのでもなく、拓也は自分で決意しました。
終盤で明らかになりますが、両親は寧ろ1年後に農園を閉める予定でいたのです。
それを拓也が真正面から受け止め、跡継ぎを決意したことに意味があります。
拓也もようやく本来の自分に立ち返ることが出来たのかも知れません。
両親の愛の大きさ
そして3つ目に、実家に帰省したことで両親の愛の大きさを知ったという意味です。
特に実感したのは父の徹が「ガンバレ」というリンゴの文字を見たときの涙でしょう。
散々失敗・挫折を繰り返したのに責めもせず、それどころか笑顔で応援しているのです。
何もいわず優しく受け止めて人生を応援するなど並大抵の親ではありません。
たとえ離れていても、拓也は両親に見守られ愛されていたことにこの時初めて気付きました。
拓也の人生は寧ろここからがスタートなのではないでしょうか。
両親が知らないふりをしていた理由
そんな拓也の挫折と失敗だらけの人生を両親は全てお見通しでした。
陸上の夢を挫折したことも大学を中退したこともバンドのことも全部見抜いていたのです。
それにもかかわらず、ずっと知らない振り・見て見ぬ振りしていた理由は何でしょうか?
拓也の人生は拓也のもの
1番の理由として、拓也の人生は拓也のものであるからということが挙げられます。