武志の人生の目的は、愛する光子を守ることだったのです。
娘の死を聞いた光子が笑った意味
光子が千尋の死亡を聞いた時、笑い声とともに窓際に歩み寄ります。泣いているようにも見えました。
光子のまわりにうごめく無数の手
光子が拘置所で寝ている時に、彼女の体の周りを撫でまわす無数の手は、助けを乞う彼女の心情を示唆しているようです。
自分の犯した殺人や、育児放棄をした罪の意識に追い詰められていたのではないでしょうか。
光子の幼少期の悲劇がトラウマとなって、まとわりついているのかもしれません。
千尋を愛することができない光子
結果的に育児放棄になってしまいましたが、光子には千尋を愛せないジレンマがあったのです。
幼少期から親の愛に見離されて育った光子は、千尋に対する親の愛をどう表現してよいかわからなかったのでしょう。
千尋が笑わないと光子が嘆くシーンがありますが、子供は親の顔と雰囲気を肌で感じているのです。
気が付かないうちに、光子の千尋に対する不安が幼女の中に不安感を芽生えさせたのでしょう。
光子の笑いは幸せをあきらめるしかない思いのあらわれ
千尋が死亡したことを知った時、光子の中には最後まで千尋を本心から愛せなかった後悔があったのです。
笑ってしまったのは、理想の幸せは二度と手できないという、あきらめの気持ちが嘲笑となって出てきたのでしょう。
自身が哀れに見えたのかもしれません。
スクリーンには映りませんが、光子が窓際に立った時には泣いていたのではないでしょうか。
愚行録の意味を考える
生きていく中で、一片の曇りのない正義を貫いている人が果たしてどのくらいいるのでしょう。
事の大小はあれ、人に言えない秘密や法律に反しない程度の罪の意識を持っている人が大半でしょう。
人間の内部に宿る闇にスポットを当てた重厚なヒューマンドラマは、結末を明確にしないまま終了。
映画を見た人に問題提起をしているようです。
表面だけの人間関係に何の意味があるのでしょう。
エリートサラリーマンの田向にしても学生時代や就職後の異性関係が乱れていました。
誰にもある愚行をお互いに許し合ってこそ本当の信頼が生まれるのかもしれません。
そして、自分を許すことも必要。犯した罪は消えませんが、やり直しのきかない人生なんてないのです。
光子と武志の今後の生き方
武志と光子は、その後どんな人生を送ったのでしょう。
武志による淳子殺害が迷宮入りか、大学の関係者尾形の罪になれば、光子の真相が明るみに出ることはありません。
このまま悲しい秘密を背負ったまま生きていくのか、すべての罪を償って一から出直すのか、2人の今後が注目されます。