生命力の強さもそうですが、それ以上に繁殖力がゴキブリの強みなのです。
噂ですが、ゴキブリ1匹を見たら100匹は居るといわれています。
そんなゴキブリが厳しい環境に適応すべく進化し、個の力も強くなったのです。
しかも科学の力などを一切用いてないので無理のない正当な進化でした。
バッタは最強ではない
では、武藤がテラフォーマー相手に主張していた以下の言葉はどうでしょうか?
バッタってのは虫の王と書くんだ。ひざまずけ、ゴキブリ野郎!
映画:テラフォーマーズ/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
そう口にしながらどんどんバッタ人間という異形の怪物になっていく武藤。
しかし、彼の体は人体実験で無理に改造したものであり、副作用で限界を迎えます。
バッタが昆虫の王というのはあくまでも地球の生態系における常識です。
ゴキブリが進化を遂げた本作の火星ではその常識が一切通用しません。
ごく当たり前のことに気づけないことが武藤並びに人類の愚かしさを表わしています。
生態系の逆転
本作を通して示されているのは捕食者と被捕食者という生態系の逆転です。
地球、特に陸上においては人類が基本的に捕食者であるという常識があります。
しかし所変われば品変わるという言葉があるように、火星に移れば何の役にも立ちません。
人類が最強で居たかったのならば、ゴキブリを火星に野放しにしてはいけなかったのです。
たとえ苦しくても、人類は独力で火星で生活出来るようにしなければなりませんでした。
自然の環境の中で知恵をつけて生き延びた者こそが本作における最強の昆虫なのでしょう。
戦わなければ生き残れない
本作が伝えたかったことは「戦わなければ生き残れない」ということでしょう。
それはラストで生き残った小吉と蛭間が口にした生き延びる為の言葉が示しています。
表面上は人間の愚かしさを描きつつ、真のテーマはそんな人間がどう生き延びるか?にあるのです。
ゴキブリが火星でとんでもない進化をしてしまったことは確かに誤算でした。
しかし、その過ちが分かっているのであれば、試行錯誤しながら過ちを正すことも可能です。
火星移住を成功させるためには、人類は独自の進化を辿って生き残らなければなりません。
続編が期待される結末
いかがでしたでしょうか?
本作は原作の第1部のみをやや設定を変えて実写化していますが、結末は続編を匂わせるものでした。
原作漫画では既に地球での攻防を描いた第2部・第3部まで話が展開されています。
単なる絶望で終わらず、ここからどのように形勢逆転していくかが描かれるのです。
本作はその足がかりとして見事に実写化の高いハードルをクリアした作品となりました。
これはもしかすると、続編製作がありえるかもしれません。
役者達をはじめとして、作り手の原作に対する深い愛と情熱を感じさせる見事な大作です。