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映画『屋根裏の散歩者』は江戸川乱歩の有名短編小説・明智小五郎シリーズの5作目です。
2016年公開の本作も含め、5回も実写化がなされる程の古典的名作というべきシリーズでしょう。
窪田将治監督に『ちょっとかわいいアイアン・メイデン』の間宮夕貴と木嶋のりこの豪華キャストです。
エロティックというだけあって過去のどのシリーズよりも官能的な作風を売りにしています。
主人公を郷田から遠藤に替え、更に照子と直子を加えた3角関係という泥沼の物語です。
本稿では死を前にした照子の笑顔の意味をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、遠藤がモルヒネを所有している理由や郷田の自殺動機なども併せて読み解きます。
原作との違い
本作は原作の1部の設定だけが同じで、後は物語からキャラから全て違う作品となっています。
郷田と遠藤が出てくるのは同じですが、原作には痴情のもつれという本作独自の要素は入りません。
たとえると、「超頭脳シルバーウルフ」と「銀狼怪奇ファイル」の関係に近いでしょうか。
原作と実写版で1部の設定だけ借りて、後はオリジナルの要素で全てを作り上げています。
そんな本作の物語が何を受け手に伝えるのかを是非じっくり分析していきましょう。
死を前にした照子の笑顔の意味
本作で特に象徴的なシーンが終盤での死を前にした照子の笑顔です。
直子に責められ殺されるも尚乾いた笑いを浮かべる彼女は何を意味するのでしょうか?
狂気
まずこの笑顔は照子の狂気を何よりも表現しています。
浮気相手の直子に滅多刺しにされて痛がるどころか終始笑顔なのです。
死を恐れないその様を狂気といわずして、何といえばいいのでしょうか?
明らかに人として超えてはならない一線を超えてしまったことが窺えます。
照子はずっと好きだった遠藤を独り占めしたくて仕方なかったのです。
遠藤さえいれば他に何も要らないという完全な依存状態でしょう。
直子への優越感
2つ目に、これは遠藤を巡って争っていた直子への優越感ではないでしょうか。
照子は遠藤にとって都合のいい浮気相手でしかなく、いずれ捨てられる予定でした。
直子は元々病院の令嬢として、遠藤と良好な愛を築いており将来が確定しています。
そんな直子に照子が勝ってる要素は1つもなく、それを無理矢理作ろうとした結果でしょう。
逆にいえば、これ位のことをしないと照子は直子に優位性を保てなかったのです。
それ位照子は危うい精神状態にあったということを意味しています。
クレバーな知能犯
そして3つ目に、照子が実は頭の切れるクレバーな知能犯であるという意味です。