出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B084XLN2Y6/?tag=cinema-notes-22
映画『ROMA/ローマ』は2018年にNetflix作品として初めて日本の映画館で劇場公開されました。
天才作家アルフォンソ・キュアロン監督の色が強く出たアメリカ・メキシコ合作映画です。
1970年代のメキシコ・ローマを舞台に展開される監督自身の自伝的な物語となっています。
ノスタルジックな白黒の画面や70年代持つ独特の空気・雰囲気はキュアロン監督にしか出せません。
文芸面の完成度も非常に高く、以下を受賞・ノミネートしました。
第91回アカデミー賞外国語映画賞にメキシコ代表作として出品され、同賞および作品賞を含む同年最多の10部門にノミネート。外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3部門を受賞した。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ROMA/ローマ
本稿では空を見上げるラストの意味と伏線をじっくり掘り下げて生きましょう。
また、フェルミンが逃げた理由と海でクレオが泣いた真意も併せて読み解いていきます。
家族とは何か?
本作はその画面の美しさがもう全てを物語っているのですが、テーマはシンプルです。
それは「家族とは何か?」というごく当たり前のもので、特別なひねりはありません。
しかし、そのテーマを決して大上段から正義として振りかざさないのがポイントです。
あくまでも物語の主人公は家政婦のクレオであり、彼女視点で物語が展開されます。
果たして、ずっと住み込みで働いているクレオはソフィアの家族といえるのでしょうか?
過去の記憶を辿りつつ、改めて現代に問われる家族の意味を考察していきます。
空を見上げるラストの意味と伏線
本作のラストにおいて象徴的なのはクレオが空を見上げるラストシーンです。
とても美しい白黒の青空が移りますが、どんな意味があるのでしょうか?
その伏線と共に散りばめられた要素を読み解きます。
家族になった
クレオはラストシーンで遂に「家政婦」から「家族」に仲間入りを果たしたのです。
そのことはソフィアがこう口にしてくれています。
みんなクレオのことが大好きよ。
引用:ROMA/ローマ/配給会社:Netflix
この言葉に嘘偽りは全くなく、ソフィアをはじめ家族全員でクレオを迎え入れてくれたのです。
つまり、ラストで見上げた青空は晴れやかなクレオの心象風景のメタファーとなっています。
それは同時にクレオが本当に望んでいた「家族の絆」を手に入れた証でもあるのです。
ソフィアと子供達の接し方も他人行儀ではなくなり、家族団欒の雰囲気を出しています。
部屋の変化
2つ目にこの青空はソフィアの夫アントニオが居なくなった後の部屋の変化と連動しています。
部屋の中のものが一気になくなっていき、家の空気・雰囲気も大きく変わりました。
いわゆる「断捨離」であり、ソフィアが夫への執着を手放したことで邪念もなくなったのです。
そしてそこに家政婦のクレオが入ることで、新しい空気が部屋の中に流れるようになります。
演出自体も丁寧にこだわって撮られており、言葉を失ってしまう程の美しさです。
周囲のものが変化することはすなわち精神の変化と大きく繋がっています。
冒頭の水溜まり
まずこのラストシーンの伏線であり、対比になっているのが冒頭の水溜まりに映る飛行機です。
そう、既に冒頭からラストシーンの綺麗な青空がしっかり伏線として張られています。
冒頭の水溜まりは濁ったクレオの内面を表わし、飛行機も自分が乗っていない飛行機です。
これがラストでは本物の飛行機に乗って旅行に行った上、本物の青空となっています。