この幸せを決して無駄にしないためにも、彼は走り続けるのです。

チャーリーの精神的成長

そして3つ目にチャーリーの精神的成長をも意味しています。

後ろを振り返る時のチャーリーの立ち姿や表情には全く迷いも恐れもありません。

15にして様々な修羅場を潜り抜けてきた者だけが纏えるオーラを感じさせるのです。

おそらく並の15・16の青少年よりも遥かに強靱な精神力を持っていることでしょう。

ピートの死を含めて思いっきり泣いた後の清々しい表情が窺えます。

今後恐らく何があったとしても強く逞しく生きていける筈です。

ピートと逃げた理由

競走馬ハンドブック

本作の最初の転換点が相棒となる競走馬・ピートとの出会いでした。

チャーリーはピートの走る姿に心を奪われ、競走馬でなくなったピートと逃避行を行います。

ここではその理由について考察していきましょう。

大人の現実を見たから

〈現実〉とは何か ──数学・哲学から始まる世界像の転換 (筑摩選書)

大きなきっかけとなったのはピートの女性騎手が口にした次の言葉でした。

馬を愛してはダメ、ただの競走馬

引用:荒野にて/配給会社:ギャガ

そう、女性騎手はピートのことを金のなる木、つまり商売道具としか見ていません。

ここでまずピートは大人社会の汚さを知ってしまったのでしょう。

父も母も失ったチャーリーからすれば女性騎手の発言は命を粗末に扱うも同然です。

それは彼にとって相容れないスタンスだったのではないでしょうか。

別に女性騎手が悪いわけではなく、大人社会には大人社会のマナーがあります。

しかし、まだ青く若きチャーリーはそれが許せなかったのです。

同じ境遇である

2つ目に、チャーリーはピートが自分と同じ境遇であると感じたからではないでしょうか。

ピートも優勝出来る競走馬ではなくなったらポイ捨てしてしまうのです。

つまり商売道具としてその才能を都合良く使って無用になったら切り捨てます。

これは突然理不尽な形で自分の居場所をなくしたチャーリーと同じでしょう。

同じ痛みを味わった仲間だと感じ取れるチャーリーの繊細さが窺えます。

この大筋の部分において合致したからこそ、彼らは共に旅を始めました。

「走る」というイメージ

そして3つ目に、本作全体の演出として「走る」というイメージを強調する為です。

ラストシーンのランニングや荒野を駆け抜けるピートの姿がそれを表わしています。

これは青春物語が持つ「迸る若さ」の象徴として走る姿が描かれているのです。

牧歌的な作風でありながら、どこかドライな寂しさを画面全体に孕んでいます。

こういう演出は80年代のジュブナイル映画に多く見られた手法のオマージュでしょう。

シルバーに暴力を振るった手を握り締めた理由

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物語終盤、チャーリーはピートすら失って失意のどん底に陥ってしまいます。

その後シルバーとマーサに出会いますが、ここでも悶着がありました。

酒癖の悪いシルバーを暴力で追い出したのですが、直後その手を握りしめます。

ここではその理由について掘り下げていきましょう。

自身の行いへの恐怖

まず1つ目に、チャーリーは自身がした行いに恐怖を感じてしまったのでしょう。

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