恐怖の感情を持ちながらも、トウコはもともとから反抗・反逆する心があることが分かります。
それは、ドイツで警察に捕まった際に見えました。
警察官と看守の絵
ドイツで警察に逮捕されたトウコ。ドイツの警察官には、さんざんなじられ、暴行されました。
それに対して、トウコは反抗心を見せます。釈放後、トウコは警察官と看守の絵を描きました。
当然その絵はセクシャルな内容で、ある意味ドイツでの事件の皮肉を表しているようでもあります。
つまり、トウコはもともと同性愛に対して否定的な考えを良く思っておらず、反抗しようとしていたのです。
そのため、アメリカでも葛藤はあっても、最終的に作品を出展することを決めるのでした。
反権という時代背景
トウコ・ラークソネンであり、トム・オブ・フィンランドがアメリカにいた1950年代末から1970年代は、権力への反抗がブームでした。
抑圧されてきた、いわゆる「マイノリティ(少数派)」だった人々が声を挙げる時代だったのです。
もちろんそのマイノリティには、トウコのような性的マイノリティも含まれるのであって、時代がトウコを応援していました。
だからこそ、トウコは逮捕を恐れながらも作品を出展する勇気が出せたのです。
作風がアメリカに受けた
禁忌とされているはずのトウコの作風ですが、なぜかそれがアメリカで人気を得ました。
この理由の1つとして、トウコの作風が単純に「面白い」とアメリカで評価されたことがあります。
これまでのゲイのイメージ
トウコの作品がアメリカ国内に出回る前、アメリカだけでなく世界中で男の同性愛=なよなよの男同士の恋愛、とイメージされていました。
しかしトウコの作品の大元は戦場の兵士であり、それから派生した「戦う男」がトウコの作品のイメージです。
これまでのゲイに対する概念が大きく崩れた作品を、アメリカ国民は「面白い」と思いました。
だからこそ、ゲイだとか同性愛だとかでなく、単純に「絵が面白い」と思われ、アメリカで定着するきっかけを得るのです。
反権力の波に乗る
先述したように、とくに1970年代のアメリカはベトナム戦争の疲弊の影響もあって、反権力が大きく叫ばれます。
その中で、同性愛者もこれまで抑圧されてきた人々であり、トウコの画風が反権力の時代に沿った画風でした。
流行に乗ったトウコの作風は、虐げられてきた同性愛者の共感と支援、さらには同じ波に乗る人々の支援を受けます。
だからこそ、アメリカ国内で人気が出たのです。
QEENのフレディの共感
1970年前半のアメリカのハードロックバンドブームの一角から、世界のバンドへと成長したのがQEENです。
そのリード・ボーカルである、フレディ・マーキュリーはトウコの作品に影響を受けた人物の一人でした。
フレディの共感
フレディは、トウコの描く作品の「マッチョ」「Tシャツ」姿に共感し、そのイメージの姿でステージに上がった人物でした。
実際に私たちが思う、「クイーンのフレディ」の姿は、まさにトウコの作風の人物と同じなのです。