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映画『少女』は湊かなえの原作小説を2016年に三島有紀子監督が実写化した作品です。
主演を本田翼と山本美月が演じ、脇には児嶋一哉や稲垣吾郎という豪華布陣になっています。
勿論俳優・女優のスター性ではなく、演技力と演出力も安定して高いクオリティでした。
幼少期からの親友である桜井由紀と草野敦子の数奇な運命が物語のメインです。
2人の運命の歯車は滝沢紫織という転校生によりどんどん狂っていきます。
その末に明かされる衝撃の結末は並のホラー小説・映画よりも恐怖を感じさせるものでした。
本稿では敦子が足が悪いフリをしていた理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、海に入る意味と昴が父を刺した理由、そして紫織がメールを送った意図も読み解きます。
関わる人が全て
本作全体を通してのメッセージは非常にストレートな「関わる人が全て」ではないでしょうか。
由紀と敦子を中心に複雑な人間関係の錯綜や情念を描いていますが、本質は簡単なものです。
幼い頃からの親友であった由紀と敦子がその友情を引き裂かれていく原因は周囲にありました。
敦子の小説を盗作した小倉先生や夏休みのボランティアで関わった人々などが影響を与えます。
その中で強烈だったのが転校生の滝沢紫織であり、彼女は2人の絆を切り裂く元凶となりました。
学校というとても狭い世界は人間関係の泥沼をいとも容易く招いてしまうものになるのです。
関わる人を間違えた彼女達の行く末は一体どんな所へ着地していくのかを見ていきましょう。
足が悪いフリをしていた理由
由紀と敦子は幼い頃からの親友でしたが、敦子は由紀に対してある嘘をついていました。
それが「足が悪い」というもので、その大怪我自体は完治していたのです。
では何故それを騙して足を引きずって歩く真似をしていたのかを掘り下げましょう。
気遣い
1番にあったのは敦子なりの由紀に対する「気遣い」ではないでしょうか。
由紀も敦子も学校でいじめを受け、大怪我をしたという共通の痛みを抱えています。
しかし、由紀の左手が完治しないのに対して、敦子のアキレス腱は完治していたのです。
それを由紀に勘づかれてしまったら、由紀は裏切られたと思ってしまうかも知れません。
そうならないようにする為に、敢えて足が悪い振りをし続けていたのです。
疑念
2つ目に、物語序盤で由紀が執筆し小倉先生が盗作した小説への疑念です。
由紀は後遺症を引きずり落ち込んでいる敦子を励ましたかったのでしょう。
しかし、励ますも何も敦子の足は完治していたのですから由紀の行いはズレています。
それだけならともかく由紀は盗作された報復に小倉先生を停職処分と自殺へ追い込みました。
そんな由紀を見て、敦子はただならぬサイコパスの恐怖を感じたのではないでしょうか。
無難にやり過ごしたかった
3つ目に、敦子はこの学校生活を何とか無難にやり過ごしたかったからです。
足の怪我が原因で剣道部の人たちから恨まれ、クラスでいじめられていました。
しかし、敦子はそうして由紀がいじめられないようにしていたのです。