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『パリに見出されたピアニスト』は2018年公開のフランス映画です。

数々の名曲に彩られた世界はまるで芸術作品のようであり、スクリーンに釘付けになった人もいるのではないでしょうか。

貧しい青年マチューのシンデレラストーリーですが、彼に携わる人々の心情が切なく描かれていました。

パリ在住の監督ルドヴィク・バーナードは、パリの光と闇を音楽という付加価値をのせて表現しています。

劇中ピエールはマチューにどんな才能を感じたのか、そしてなぜ彼を優遇するのか…。

彼らの奥に宿る心情を細かく考察していきましょう。

マチューからどんな才能を感じたのか

 Au bout des doigts

駅に置いてある共有のピアノを弾く青年マチューは、決して品行方正な青年ではありません。

ランベール・ウィルソン演じるピエールがそんなマチューを育てようと思ったのは、なぜなのでしょう。

他にはない独創的な演奏

マチューは子供の頃から音楽の教育を受けたエリートではありません。

ゆえに粗削りで、他の人が持っていない独創的な演奏が出来たのでしょう。

ピエールの名門音楽学校には、彼ほど異能な人物はいなかったのではないでしょうか。

人よりも上手く正確にピアノを弾く秀才たちはいても、マチューのような天才はいなかったのです。

ピエールは、一瞬でマチューが他とは違う天才であることを見抜いたといえます。

感情が豊かであること

マチューは情緒不安定といえるほど、感情が大きく変化します。

有り余るような彼の感情は、そのままピアノの演奏に現れていたのではないでしょうか。

マチューの持つ生き抜く力の激しさこそが、彼の魅力だったのでしょう。

名門音楽学校は、財のある人物しか通うことは出来ません。

恵まれた生徒達が持っていない、切なさや怒りにも似た激情をマチューは持っていたのです。

ピエールが魅了された演奏は、マチューの生き方が反映された情熱的な演奏だったといえます。

そしてそれこそが、彼の持っていた才能のひとつだったのです。

弾きたくて弾いている魅力

 Au bout des doigts

駅で見かけたマチューはピアノを弾きたい、という衝動にかられ心のままにピアノを弾いています。

彼がピアノに向かうその理由は、暇な時間を潰す為ではありません。

ピアノを弾きたくても引く場所がない、ピアノを弾くために捕まるという危険までおかしているのです。

いいかえれば、ピアノは彼の本能が求めているものといえるのではないでしょうか。