物語の流れを整理しながら考察していきます。

膠着状態を破るため

1番の意図は泥沼の離婚裁判という膠着状態を破るため、すなわちブレイクスルーです。

2人は確かに離婚の意思こそありましたが、裁判沙汰にまでするつもりはありませんでした。

弁護士にはどれだけ説明しても事務的な手続きしかせず、心情を汲み取ってはくれません。

ですから、本当に大事なことが何も話し合えないまま、外堀だけが固められていくのです。

そのような思惑違いを避ける為に、改めて話し合いの場を設けたのではないでしょうか。

親のエゴ

エゴを抑える技術 (フェニックスシリーズ)

2つ目に、真正面から本音をぶつけ合うことで、親のエゴなるものが見えることです。

特にニコールがそうですが、彼女はヘンリーを盾にして自己正当化を図ります。

それはチャーリー側も同じで、彼もまた息子を盾にニコールを罵倒するのです。

そう、ここで明らかになるのは2人とも「息子の為」を口実にしていることでしょう。

普段は表面化しない親という生き物の負の側面を表現しているのです。

完璧な親などいない

そして3つ目に、完璧な親など居ないというのを浮き彫りにすることです。

ニコールもチャーリーもどれだけ話し合っても妥協点を見出せませんでした。

仲睦まじい夫婦であろうとすればする程空回りしてしまうのです。

いかに2人が普段から意思疎通を図っていないかの証左でもあります。

ニコールもチャーリーも自分の親としての至らなさにここで気付くのです。

逆にいうと、2人はようやく「」であることの自覚がここで出来たのでしょう。

結婚は人生の墓場といわれる理由

結婚は人生の墓場か? (集英社文庫)

本作を見ていくと、改めて結婚が人生の墓場といわれる理由が見えてきます。

それは多くの夫婦が「結婚した後」にまで考えが及ばないからでしょう。

チャーリーとニコールもやはり舞台の仕事がきっかけで縁談が持ち上がりました。

しかし、お互いを好きだという気持ちのまま勢いで結婚してしまったのです。

だから、気持ちに変化が生じた時に折り合いをつけられなくなります。

2人ともその辺りをよく考えなかったから、破綻して上手く行かなくなりました。

結婚というシステムの問題

損する結婚 儲かる離婚(新潮新書)

本作は離婚とはいえ、決して絶縁に至るわけではないという面白い着地を見せました。

しかし、同時にこの結末がまた結婚というシステム自体の問題も浮き彫りにしています。

結婚の問題は何かというと「自由」が完全に奪われてしまうということです。

使いたいお金をプライベートや仕事ではなく子供や家庭に回さないといけません。

キャリアアップを望んだら、それこそ結婚生活が縛りになることさえあります。

いってみれば、とんでもない大量の荷物を抱えながら走るようなものです。

結婚というシステムも見直されるべき時に来ているのではないでしょうか。

そのようなことをニコールとチャーリーを通じて伝えてくれる名作でした。