彼女の心の中に少し分け入ってみましょう
なぜ吹奏楽部に入らなかったのか
興味を持っているにもかかわらず彼女が表面的に吹奏楽部と距離を置いた理由は何だったのでしょうか。
彼女は元部長の檜山とも近しかったようで、彼が入部したのですから彼女が入ってもおかしくない流れでした。
しかも期限の最終日を迎え、あと一人で目標達成という状況でも彼女は入部を断り、図書館で昼寝ばかりをしている手塚を紹介するのです。
彼女はチカに「プロを目指す人は一人で練習するものだ」という趣旨の話をします。
彼女にしてみれば「アマチュアの仲良しごっこをしている暇はない」ということだったのかもしれません。
レベルの違いも歴然としており、お互いのためにならないと考えた可能性もあります。
陰ながら支えたわけ
ただそうはいっても同じ高校生ですから、チカたちの仲間意識には興味がありました。
演奏とは別の何らかの形で参加したい気持ちは自分自身でも抑えきれなかったのではないでしょうか。
このため吹奏楽部の練習に遠隔で割り込んだり、手塚を紹介したりしたのです。
いよいよとなるとチカの練習相手も務めました。
最後にはどうしても演奏会に駆けつけざるを得なかったほど皆との連帯意識が高まっていたのです。
チカはなぜフルートを始め、高校で吹奏楽部を作ろうとしたのか
特にフルートの華やかさに目を奪われたのです。
普通の高校生なら個人的に練習しつつも、いつしか熱が冷めてしまうでしょう。
彼女はバレーボールの試合で膝を痛め、バレーボールを諦めざるを得ませんでした。
このため彼女は挫折から立ち上がるための何かを必要としていたのです。
彼女の感性の熱量は普通の高校生よりも高いようで、自分でフルートを練習するくらいでは不十分でした。
廃部になりかけていた吹奏楽部を立て直す位のやりがいのあるイベントが必要だったのかもしれません。
【ハルチカ】は爽やかなアイドル映画
映画【ハルチカ】は橋本環奈と佐藤勝利というダブル主演で、男子・女子双方のファンを獲得するという心憎い仕掛けです。
ラストもミュージカル仕立てのような大団円で気持ちのよい終わり方になっています。
学校の先生や親との絡みは極力抑えて、若者視点で描いているのです。
この映画は若者たちが学生時代に一度位は経験してみたいと心の奥底で考えているはずの仲間との強い連帯をみごとに見せてくれます。
友達以上恋人未満という中途半端で扱いにくい関係をサラリと描ききった手法も見事といえるでしょう。