そしてその答えはおそらくYESです。
主人公であるアレックスは、どんなことをしても復讐を成しえようとしているのです。
冷たい言葉も納得
エレーヌはいずれ自殺した
引用:9人の翻訳家 囚われたベストセラー/配給会社:ギャガ
アレックスの冷たい言葉に、違和感を感じた人もいるのではないでしょうか。
彼は現実を見ており、夢見る青年ではありません。
文学の世界の厳しさも身にしみていたはずです。
そして、彼は被害者として翻訳者の中にいるのではなく、加害者として潜入しているのです。
脅迫メールを送る彼の中に、復讐という悪が潜んでいてもおかしくはありません。
エレーヌの死に関しては、他人の不幸だったのではないでしょうか。
アレックスは仲間を利用した
彼の犯行計画は完璧なものだったといえるのではないでしょうか。
アングストロームが翻訳家たちを疑うように仕向け、事前に仲間たちと原稿のすり替えを行うことで自分がオスカル・ブラックであることを隠しました。
原稿をすり替えていた、というのもアレックスの仕組んだ嘘だったわけですが、自分の正体を隠す目的の他にも意図があるような気がします。
それは、翻訳家たちのパニックです。
バレてしまったのではないか、という不安からアングストロームに主犯であるアレックスを垂れ込むものがいるかもしれない…。
少々深読みですが、アレックスはそこまで計算していたのかもしれません。
ローズマリーが彼の部屋に来ることを事前に予測していたのも、その裏付けとなるでしょう。
実際にあった話
本作品はダン・ブラウンの「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」と続く小説の裏話がモデルとなっています。
シリーズ4作目となる「インフェルノ」は翻訳時、流出を恐れられて翻訳家たちは地下室に隔離されたそうです。
人々の知りたいという欲や、作品価値を感じるエピソードではないでしょうか。
謎解き不可能な傑作
本作品は、初めて観たものが謎を解明することはとても難しいと評価されています。
監督レジス・ロワンサルの巧みなミスリードが観る者を迷宮へと誘い込みます。
そして結末を知った後、観返したくなる作品です。
人気文学の翻訳という仕事、文学へのそれぞれの価値観を垣間見ることが出来るのです。