ドクにもそうした人間的な感情があることは、好きな人がいたという言葉からも窺えます。
ベイビーを助けようとしなければ、ドクはバディに立ち向かわず逃げようとしたでしょう。
しかし、皮肉にも悪党とは無縁に思える情こそがドクの命取りとなったのです。
ベイビーが逮捕された意味
ベイビーが逮捕されことにはどんな意味があったのでしょうか。
贖罪のため
育ての親のためとはいえ、ベイビーが手に入れてきた金は犯罪に手を染めて手に入れたもの。
作中ではベイビー達の犯罪に巻き込まれて多数の死者が出ています。望んで手を染めていたわけではないが、その贖罪はしなければならない。
それが、犯罪に加担した者が死に絶えた中で唯一生き残ったベイビーの責任でした。
ベイビーが逮捕されたのは、生き残ったからとも言えるかもしれません。
新しい未来を生きるため
育ての親との出会い以外でベイビーが出会ってきたのは、皆犯罪者。
そんな中で、犯罪者でない人間との出会いとして描かれたのがデボラでした。
デボラは真っ当な社会の中で生きてきた人間。今度こそベイビーの前途には明るいものが待つことを感じさせる存在です。
しかし、真っ当な存在だからこそ血に染まったベイビーのままでは駄目だったのです。
バディに撃たれ、聴力がなくなったようにも受け取れるベイビー。
悪事に使ってきた自分の力を失い、やり直す機会が与えられたことを示しています。
その先にあるデボラとの新しい未来のためにベイビーは逮捕されたのです。
華麗なるアクションドラマ
主人公の葛藤が描かれる「ベイビー・ドライバー」。しかし、本作の魅力はそれだけにとどまりません。
ミュージカルやミュージックビデオとも異なる音楽の使われ方。
ベイビーが歌うわけではありませんが、観客は流れている音楽の特色からベイビーの心の声を聴くことができます。
音楽が登場人物の心の動きを表現するだけでなく、それに合わせて構成されたアクションも魅力の一つです。
暴力的な場面も多い本作ですが、音楽が流れる場面はお洒落さも感じられ血なまぐささが緩和されていました。
希望を含めたラストシーンを見終わると、ベイビーのように音楽で体を動かしたくなる本作を是非楽しんでみませんか。