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映画「仮面病棟」は、冷酷な復讐劇を描きながら、捨てて良い命はないという大きなテーマに取り組んだミステリーです。
病院の違法医療と隠蔽工作に巻き込まれて命を落とした姉のために、壮絶な執念で復讐に挑む瞳の表情に引き込まれました。
婚約者を失った過去を持つ現役医師が、当直する病院から脱出を試みる展開はスピーディで息をのむ心理戦でした。
本作は、知念未希人さんの原作を木村ひさし監督が映画化したものです。
若手実力派の坂口健太郎さんや、永野芽衣さんが迫真の演技で難役をこなしています。
脚本に原作者の知念さんが参加しているのも話題となりました。
復讐せずに立ち去った真意を徹底考察
映画では明らかにされていませんが、瞳は最後の復讐に踏みとどまったと思われます。
なぜ復讐せずにたちさったのでしょうか。瞳の心情を読みながら考察してみました。
速水も同じ境遇になっていたかもしれない
もし婚約者の受け入れを院長が了解していたら、それが小堺の妹でも院長の田所は臓器移植を施したでしょう。
速水も瞳と同じ立場になっていたかもしれません。大事な人が交通事故で瀕死の状態にあったことも偶然の一致でしょうか。
速水には、受け入れを拒んだ田所病院にわだかまりはあったものの、憎むまでには発展しません。
政治家の姿を前にして瞳の中に戸惑いが見えたのは、憎んではならないと叫ぶ速水の姿を見た時でした。
大事な人を失った失意の感情を見せずに憎む感情を否定する速水を見て、瞳は初めて自分の愚かさを客観的に見たのです。
憎む感情はなくなったのか
瞳の恨みの感情は本当になくなったのでしょうか。
瞳の復讐への執念は、何の理由も言い訳も許しませんでした。復讐の炎が消えたとは思えません。
ただ、自分の感情が速水の正義感に揺らいだのは事実です。
大事な人の体の一部がそこにあるから
政治家の体内に大事な姉の臓器が移植されていることも、復讐をせずに立ち去った理由のひとつでしょう。
撃ち殺すことは、姉から残された命の最後のひとかけらまで奪うことになります。
憎む感情と姉への愛情との間で葛藤した瞳の心。復讐の執念より姉への愛が勝ったのかもしれません。
なぜ瞳は宮田と手を組んだ
瞳はなぜ宮田と手を組んだのでしょう。瞳の復讐の目的から考えてみました。
あなたと会えて良かったとつぶやく瞳の真意
ピエロに扮した宮田は、病院の内部事情を探ろうとしていたのです。瞳と利害が一致しました。
瞳が、あなたに会えて良かったとつぶやく意味はなんでしょうか。復讐に関する内容ではないようです。
瞳がつぶやいた相手は、宮田と速水で、2人とも大事な人を亡くしています。
ここでの「あなた」は、復讐に対する同じ目的を有する相手ではなく、自分と同じ失意を感じた相手という意味だと思われます。
瞳の目的は復讐
宮田も病院内部が怪しいと感じていました。理学療法士として病院内部に潜入することを考えていたとも考えられます。