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『エンジェルサイン』は2019年公開のオムニバス映画です。
セリフが一切ないにもかかわらず、観る者に明確に語りかけてくる名作となっています。
本作のエピローグには松下奈緒演じるアイカが、空港で演奏を披露していました。
プロのチェロリストの彼女がなぜ、空港で演奏をしたのでしょう。
また劇中の奇跡はなぜ起こったのか、青い蝶との関係や蝶の正体をじっくり考察していきます。
最後に紡がれたエピソードの共通点とは一体何だったのでしょうか。
青い蝶の正体とは
青い蝶は本作の主人公と呼べるのではないでしょうか。
5作品にプロローグとエピローグをつけた本作では、それぞれに蝶の正体が異なっています。
「別れと始まり」では妻の愛情
全てにおいて共通していますが、青い蝶が現れる時には必ず「エンジェルサイン」のピアノ曲が入ります。
「別れと始まり」では、電車に乗っていた老人が忘れたラジオからも同曲が聴こえていたのです。
おそらくこの老人もかつて青い蝶を見たのではないでしょうか。
そして緒方直人演じる車掌も蝶に誘われ壁一面の写真を見つけますが、そこで多くの人に愛された妻のカフェの存在を感じています。
蝶は菊池桃子演じる妻の愛情であり、妻の想いだったのではないでしょうか。
独りで寂しく生きる夫に、愛される喜びを与えたかったのでしょう。
夫がカフェを引き継いでくれれば、多くの人の笑顔に出会うことが出来るのです。
妻の愛情が、幸せになる為に夫を導いてくれたと解釈出来ます。
「空への手紙」では愛犬の想い
病気で先に死んでしまった愛犬は、少女のことが大好きだったはずです。
愛犬はいつも見守っている、という気持ちを伝えたかったのではないでしょうか。
青い蝶が愛犬のお墓にとまり、そして飛び去るシーンもありました。
おそらく愛犬の想いが、蝶をメッセンジャーとして遣わしたのでしょう。
「30分30秒」では母親の願い
「30分30秒」では、青い蝶が母親の姿になるシーンが描かれています。
ここで青い蝶は、死にゆく人の想いを叶える憑依物としても登場しているのです。
子供を産むまでわずかな時間でいいから生きていたい、という母の願いが蝶を呼んだのではないでしょうか。
実際に時間を止めたのは「エンジェルサイン」のピアノの音ですが、このピアノの音と共に出現するのが青い蝶です。
青い蝶を見たものには奇跡が訪れる…。
蝶はその名の通り、天使が舞い降りるシグナルなのかもしれません。