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映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』は赤坂アカの原作漫画を実写化した作品です。
秀知院学園を舞台に展開されるラブストーリーとしてTVアニメは勿論スピンオフまで作られる程の人気を博しました。
主演の白銀御行をKing&Princeの平野紫耀、四宮かぐやを橋本環奈という最強のタッグが務めています。
プライドの高い生徒会の会長と副会長が頭脳合戦を繰り広げてどっちが先に告白するかの駆け引きです。
原作の非常にファンタジックな世界観や作風を見事に再現した実写版は非常に高い完成度を誇ります。
本稿ではラストの見せである演説会で繰り広げられた愛の討論を考察していきましょう。
また、それを終えて2人がキスした真意についてもじっくり読み解いていきます。
原作との相違点
本作を考察していく上で、まずは原作漫画及びアニメとの相違点について触れておきましょう。
原作漫画及びアニメ版では物語のを必ずしも2人の恋愛だけに絞っている訳ではありません。
どちらかといえば、御行とかぐやを中心にした学園ドラマや青春が見所になっています。
恋愛はあくまでも2人を含むキャラクターの成長要素の一部として描かれている印象です。
対して実写版である本作は原典を踏襲ながらも、後半部分をオリジナルの展開にしています。
終盤では御行とかぐやの心理描写の焦点を当て、演説による真っ向勝負へ持っていきました。
それがより2人の内面や人間性を浮き彫りにし、原典への理解を深めてくれたのです。
果たして、本作独自の解釈がどんな物語を生んだのかをこれから考察していきます。
演説会で繰り広げられた愛の討論
本作メインの見所は何といっても終盤の演説会であり、平野紫耀と橋本環奈の演技の掛け合いが最高です。
ここで彼らは演説に名を借りた討論を行いますが、この愛の討論が何を意味するのかを考察していきましょう。
本来の自分に回帰する
物語全体のテーマからすると、愛の討論という名の告白大会は本来の自分に回帰することを意味します。
2人が生徒会所属でお互いに優等生で成績抜群でありながら、内面は全く異なっているのです。
御行は表面上そつなくこなす器用な天才肌に見えますが、実は割と不器用な泥臭い性格をしています。
勉強をはじめ、全てにおいて努力を積み重ねて結果を出す「努力の天才」という名の秀才タイプでしょう。
そしてまた、かぐやも表向きは「真面目な良い子」ですが、裏はとても傲慢な人を見下す性格です。
愛の討論を通して、2人はどんどんお互いの潜在意識というか等身大の側面を表に出していきます。
そうすることで本来の自分、即ち生まれた頃の白銀御行と四宮かぐやに戻っているのです。
ノットセルフとトゥルーセルフの葛藤
2つ目に、この愛の討論はノットセルフとトゥルーセルフの葛藤ではないでしょうか。
2人がどんどん素の自分を出すようになり、ラストはそれに気付いて咄嗟に生徒会への愛へすり替えます。
それも当然でしょう、公衆の面前で愛の告白などというとんでもないことをやったのですから。
しかし、これは極めて健全な証であり、人間誰しもが本当の自分と偽りの自分に向き合います。
この2人の場合、生き方が余りにも特殊な世界であったが故に演説という形になったのでしょう。
まだまだ100%の純度である本来の自分になることへの恥ずかしさが垣間見えます。