なぜ自分たちは憎しみあっていたのか、紛争自体が意味のないものに感じたかもしれません。
国境に引かれた境界線など感じさせない少女のセリフに、自分の入っていた檻の狭さを感じたのかもしれません。
おそらくイスラームが敵という概念が、一瞬にして消えたのではないでしょうか。
だからこそ彼も下記のイスラームの挨拶を口にしたのでしょう。
アーダーブ(挨拶を)
引用:バジュランギおじさんと、小さな迷子/配給会社: SPACEBOX
明るい未来を感じた
パワンは熱心なハヌマーン信仰者の青年であり、バジュランギの名を持っています。
バジュランギはバジュラング(ハヌマーン)の信者を意味しており、深読みすればイスラーム教徒を倒す戦士ともとれます。
ハヌマーンは勇敢な戦士として知られる神なのです。
そんな環境で育ったパワンにとって、パキスタンはいわば敵の国といえます。
しかし少女の言葉を聞いて、戦う理由がないということを知ったことでしょう。
未来を担う少女が平和のかけ橋となる言葉を発したことは、明る未来を予期した瞬間だったのかもしれません。
描かれたリアルな社会風刺
本作はインド、パキスタン両国で高い評価を受けた映画です。
実際に少女シャヒーダーの故郷カシミールは、領地争いによる紛争の絶えない地域で既に3回も戦場となっています。
近年でも空爆などが行われ、多くの民間人が犠牲となっている場所なのです。
劇中に描かれた対立は実際に起きているリアルな現状であり、この映画はまさにこの問題を表記しているものといえるでしょう。
そんな中、映画では個人個人が心を通わせ手を取り合って少女を助けていきます。
まさに理想の世界であり、多くの民衆が望む世界の在り方です。
ビザなしで国境を超えるという無謀さも、パワンの決意を感じるものでした。
パワンの決意は、紛争を止めたいという人々の願いの強さなのかもしれません。
両国の国民の声が詰め込まれた映画
本作は娯楽性の強いボリウッド映画ですが、娯楽という枠を超えて社会問題を大きく取り上げた話題作となりました。
インド、パキスタンをはじめ世界中に紛争の無意味さを提示したのです。
少女シャヒーダーの素直さとパワンの優しさが見せる世界こそが、戦争に対する答えなのではないでしょうか。
信じる神は異なるけれど、そこには人としての心の繋がりがありました。