でもサラムの叔父たちの世代やサラムたち若者の世代、さらには視聴者のイスラエルの女性たちを納得させるラストはこれしかなかったのです。

誰しもがこのような超現実的な力でイスラエルとパレスチナの紛争を終わらせて欲しいと考えているに違いありません。

サラムの叔父たち

サラムの叔父たちはイスラエルとパレスチナ自治政府を相互に承認し合うオスロ合意の失敗に失望している世代です。

パレスチナの人たちをテロ集団としてしか見ることが出来ません。

このため一応ラヘルとイェフダの結婚という展開を容認したにもかかわらず、ラストはラヘルの自爆攻撃ということにしてしまったのです。

そのような叔父たちも報復の連鎖で紛争が解決しないことは十分理解しており、これを止めてくれる何物かを期待していたのかも知れません。

アッシによる強引なシナリオ展開はそれを可能にしたのです。

サラムたち若い世代

サラムたち若い世代と叔父たちは明らかにジェネレーションギャップがあります。

サラムたちは紛争そのものに興味を失いつつあります。日々の生活こそが重要なのです。

彼はただよく聴きます。でも聴くだけでそれを自己主張として表現する手段を持ちませんでした。

彼はアッシとの共同作業を経て次第に自分自身の言葉を持つことになります。

意表を突いたラストのシナリオ展開はそのようなサラムとアッシの自己主張だったのです。

イスラエルの女性たち

イスラエルの女性視聴者はこのドラマに夢中です。これは日本の多くの主婦たちが昼ドラに夢中なのと重なります。

彼女たちは現実離れしたハラハラドキドキの展開を期待しているのです。

もしラヘルの自爆攻撃でドラマが終わってしまったら彼女たちは後味の悪い思いをしたことでしょう。

何はともあれ、誰も死ぬことがなくドラマが意表を突く形で終わったことは、彼女たちにとってそれなりに満足な結末だったのです。

それぞれのアイデンティティ

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パレスチナのアラブの人たちは国も領土も持ちません。自分たちが寄って立つものがないのです。

これらの人々にとって自己のアイデンティティとはどのようなものなのでしょうか。

一方でイスラエルの人々にとってのアイデンティティとは如何なるものなのか考えてみましょう。

イスラエルは他の民族が住んでいた地に割り込むようにして自分の国を建国しました。

常識的には無理筋です。周りをインディアンに囲まれた砦の中にいるような気分なのではないでしょうか。

そのような人たちはかなり無理をして自己正当性を維持せざるを得ないのかも知れません。

フムスに見るイスラエルのアイデンティティ

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フムスはアラブの家庭料理だったのですが、イスラエルでも外食料理として定着しました。

アッシもこのラムスに目がありません。