しかし妻エレンが彼女を受け入れようとしているから、自分も受け入れようと思っていたのかもしれません。
しかし、その心境は複雑なものだったことでしょう。
ナンシーが立ち去るのを止めなかったのは、止めるほどの強い情熱がなかったからといえます。
彼女が去るのは仕方のないこと、元の生活に戻るだけ…。
ナンシーが残っても、妻エレンの悲しみは消えないと感じていたはずです。
そしてレオは、すでに娘が戻ることを半ばあきらめていたのではないでしょうか。
エレンが泣き崩れた理由
検査結果が通知された時、エレンは泣き崩れていました。
彼女が泣き崩れた真意は何だったのでしょう。
他人だと判明したから
彼女が泣き崩れた最大の理由は、DNA検査によって他人であると判明したからです。
ある日突然訪れたナンシーは、ブルックの成長した姿に似ており過去の記憶もブルックのものでした。
エレンは今度こそは本物だと思っていたことでしょう。
長年待ち続けた娘が、目の前に戻ってきたと幸せを感じていたのです。
しかし、結果は違っており娘ではかなったという悲しみが彼女を襲ったと考えられます。
裏切られたから
ナンシーと共に過ごした時間は、お互いを知る大切な時間となっています。
エレンは彼女をのことを娘かもしれない大切な人として、認識していました。
しかしナンシーの言葉は嘘であり、自分達は裏切られたのです。
娘と再会したいだけなのになぜ騙されてしまうのか、人生への怒りも感じていたのではないでしょうか。
もう見つからないと気がついたから
エレンはすでに高齢であり、これまでも本当の娘は出てきませんでした。
今度こそはと思ったナンシーも他人であることが判明し、もう娘は帰ってこないのだと絶望したのです。
今まで張り詰めていた糸が切れてしまったのでしょう。
だからこそ、偽物であるナンシーを娘として受け入れようとしたのです。
虚言癖の女性を描く傑作
本作は現代に潜む闇を見事に描いた作品です。
SNSの世界で関心を引こうとする女性は、嘘をつくことでコミュニケーションをとり存在を維持しています。
人付き合いや孤独といった背景を踏まえ、絶妙な人間心理が描かれていました。
それぞれの立場から観ていくと、角度の違った楽しみ方が出来るのではないでしょうか。