この物語においてリーは当初カイルの報復のターゲットでしたが、途中からリーはカイル側の人間になります。
カイルもそれを理解したからこそ、爆弾が偽物だと明かしたに違いありません。
カイルと同様リーもアイビスの株価がなぜ暴落したか、そしてその背後にいたキャンビーを追求することにしたのです。
会見場に向かったリー
リーは狙撃手が自分に向けて発砲したことで目が覚めます。
これが切っ掛けとなってリーはカイルを盾にして会見場に向かい、事の真実を見極めようと決心したのです。
リーにとって誰が味方で誰が敵かが見えた瞬間でした。
レニーを同行させた理由
マスコミの世界に生きる人間であったリーにはもう一つの狙いがあったはずです。
事の次第を大衆の監視下に置くことです。そのためにカメラマンのレニーを会見場まで同行させました。
マネーモンスターのライブ番組を続けることにしたのです。この部分は長年の付き合いであるパティとの以心伝心があったのでしょう。
このような大衆監視下では警察は自分を狙撃するなどという無茶なことは出来ないことも読んでいたに違いありません。
パティの狙い
もちろんパティは正義心だけでキャンビーの悪事を暴こうとしたわけではありません。
彼女は「マネーモンスター」という番組のディレクターでした。マスコミの人間としての彼女の本能が彼女を突き動かしたのです。
番組を面白くするために情報を収集し、証拠を固め編集しました。
彼女の意図はリーに伝わり、リーとパティはいつものアドリブでこの事件を「マネーモンスター」のライブ番組として作り上げたのでした。
アイビスの株価が上がらなかったわけ
リーが番組を通じて仕掛けたネット取引によるアイビスの株価操作が成功しなかったのはなぜなのでしょうか。
彼が「株価は自分の命の価値なのだ」と発言した途端に株価は下がってしまいました。
以前大衆はリーの「アイビスの株は買いだ」という発言でアイビスの株を買いましたが、今回彼の命のためには株を買わなかったのです。
大衆にとっては株の売買は自分の利益のためにすることではあっても、人助けのためにすることではないという当たり前の結果になったのでした。
ウォール街の闇を描いた【マネーモンスター】
映画【マネーモンスター】は謎解きとハラハラ・ドキドキのサスペンス映画としても十分楽しめる作品です。
一方でこの作品は金儲けのためにあらゆる手段を講じ、それを自己正当化するウォール街の闇にも切り込んでいます。
持てる者は一層豊かになり持たざる者はなけなしの資金さえ搾取され、ますます格差が広がっていく現代社会の矛盾をも表現しているのです。
パティやリーが生きるマスコミはといえば、人の命が絡む事件でさえ番組のネタにしてしまいます。