間違いないと思われた作品が全く売れなかったという話が物語の中で誰かから語られるではありませんか。
「げ~ぺ~う~」の企業論理で考えれば、果たしてSIVAがどれだけ利益を生み出す仕事か確信が持てなかったとしても不思議ではありません。
そのような仕事に会社のリソースを大きく割くことはある意味危険と考えた可能性があります。
もっと契約金をつり上げてリスクを小さくしようと考えることは、ビジネスとして十分理解できることなのではないでしょうか。
アニメ業界の実情
仕事が計画されたスケジュール通りには進まず、駆け引きと交渉の中でクリエーターたちが翻弄されるのはアニメ業界の特質です。
アニメ制作は規格どおりにものを大量生産するのとは違います。
何が会社の方向性として正しいのかという確たるものを定めるのも難しい業界です。
いけると思われた企画がスポンサーの意向で急遽ストップすることがあります。
また他の興味深い企画が出てきたために進んでいた当初の企画が中止されたりすることもあり得るのです。
SIVAも当初は「げ~ぺ~う~」にとって魅力的な仕事だったのでしょうが、状況が変化し制作が途中で放棄されたと考えられます。
このようなことはアニメ業界としては当然想定すべき事態なのではないでしょうか。
あおいが元社長の店で涙したわけ
あおいは丸川元社長の店でカレーライスを食べて涙を流します。
丸川は「少し辛すぎたかな」とさりげない言葉をかけますが、あおいが流した涙にはわけがあるはずです。
あおいの涙のわけを考察してみましょう。
そもそも丸川の店を訪ねたのは
あおいは武蔵野アニメーションの現状を何とかしたいと考えていました。
このままではダメだとわかっていても、どうすればいいのか途方に暮れていたのです。
そんな彼女を支えていたのは丸川たちとともに作り上げてきた武蔵野アニメーションでの成功体験だったのではないでしょうか。
人は困難に遭遇したときスタートラインに戻ろうとします。
あおいも武蔵野アニメーションでの仕事に行き詰まり、かつて輝いていた自分を思い出そうとして丸川の店に足を向けたのではないでしょうか。
丸川は後輩の道しるべとなるような新しいアニメの道を切り拓くよう、あおいの背中を押します。
カレーライスがスイッチ
あおいの気持ちのスイッチが切り替わったのは丸川のカレーライスが切っ掛けだったのではないでしょうか。
人が食っていくためにはいやな仕事にも甘んじる必要があると、自分をごまかし続けることにあおいは限界を感じていたはずです。