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映画「焼肉ドラゴン」は2018年に公開された作品です。劇作家としても活動する鄭義信の戯曲が先にあり、小説化もされました。
昭和40年代の大阪を舞台に、国有地を不法占拠した在日韓国人家族の姿が描かれたのが本作です。
監督を務めた鄭義信自身も、家族と供に姫路城の国有地に不法居住していた過去がありました。
本作はタブー視されがちな難しいテーマに、真正面から挑んだ作品となっています。
真木よう子や大泉洋、井上真央といった日本人キャストにキム・サンホとイ・ジョンウンを両親に起用した国際色溢れるキャスティングがなされました。
映画のラストで紆余曲折の末家族はそれぞれ別の道を歩み始めますが、そうなった理由は何だったのでしょうか?
一家の長男で不幸な死を遂げた時生の転校を龍吉が頑なに許可しなかった理由。
哲男の気持ちを拒否し続けた静花が、最終的にそれを受け入れた真意と合わせて考察します。
娘たちの自立
家族が別々の道を歩み始めた背景には娘たちの自立が関わっています。
それぞれのパートナー
三姉妹はそれぞれのパートナーを見つけました。
そこに至るには家族間の衝突もありましたが、それを乗り越えて生まれた出会いです。
これまでひとつ屋根の下で暮らしていた家族ですが、姉妹たちはこれからそれぞれの家族のために生きなければなりません。
三姉妹とも紆余曲折はありましたが、だからこそパートナーとの信頼の気持ちは彼女たちの両親と同じくらいに深いものです。
だから龍吉たちは娘たちの未来に心配はありません。もう自分たちと離れても大丈夫だと感じたのです。
男たちの行く先
三姉妹のパートナーになった男たちはそれぞれの行く先を持っていました。
哲男は北朝鮮に、目白は韓国に、長谷川は自身が開いた小さな店へ進みます。
母親の英順は龍吉というパートナーにずっとついてきました。女は男についていくものというのがこの家族の在り方です。
だから娘たちもお互いに助け合いながら、それぞれの男についていきます。
両親の姿と同じように三姉妹は自立していきました。
親の姿を見て育った彼女たちの胸には希望が溢れています。
家族が別々の道を選んだ理由
家族が別々の道を選んだ理由とは一体何だったのでしょうか。
強制的な立ち退き
一番大きな理由は、不法占拠していた国有地から退去しなければならなくなったことです。
これまで粘り強く居座り続けた金一家ですが、それも遂に限界が訪れました。
折しも娘たちはそれぞれがパートナーを見つけて、新しい人生に踏み出そうという時だったのです。
ここからは各々の別の人生が始まる時だと誰もが考えたのでしょう。