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【きみと、波にのれたら】メッセージを送った港の心境を考察!もう会えないと知りつつなぜ笑顔だった?登場する卵料理の意味とは

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07X8WXKJY/cinema-notes-22

『きみと、波にのれたら』は、2019年6月21日公開の日本のアニメーション映画です。監督は湯浅政明監督。

「夜明け告げるルーのうた」で炸裂した「海の表現」を今作でも存分に見せてくれています。

しかし、美しい「海の表現」だけではありません。

雛罌粟 港(ひなげし みなと)と向水 ひな子(むかいみず ひなこ)のやり取りの中に込められた意味を読み解くことも本作の醍醐味のひとつです。

そこで今回は事故直前にメッセージを送った港の心境港が最後に天に登っていくシーンでなぜ笑顔だったのかを考察していきましょう。

また、映画全体に登場する卵料理の意味についても解説していきます。

「甘い」ラブストーリー

公式ビジュアルストーリーbook きみと、波にのれたら (コミックス単行本) (日本語) 単行本 – 2019/6/21

まず何といっても本作の特徴は、とろけるような「甘い」ラブストーリーであるという点です。

湯浅監督は自分の作品は全てラブストーリーだと認識していたようですが、今作は特に「ラブ」の描写を意識し真正面から恋愛を描いています。

出会い

ひな子の住むマンションで火事が起きて、屋上に避難していたひな子を消防士である港が助けに来ます。

これが二人の出会いです。この時の「出会い」の分かりやすさは背景の「花火」に表れていましたね。

まるでふたりの運命的な出会いを祝福しているようでした。わかりやすく「甘い」表現でした。

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主題歌でもある『Brand New Story』をふたりが歌うシーンこそがこの映画全体で一番甘い空気感を醸し出していたシーンといえるでしょう。

ただ普通に歌っているのではなく、合間合間に挿入される「笑い声」「息遣い」が本当のリア充カップルのそれを聞いているように感じられます。

手をつないで…

手を繋ぎながらオムライスを食べている姿がありました。

現実にはあり得なさそうな「リア充」ぶりは、ふたりの親密さを効果的に表現している印象的なシーンといえます。

このような要素が特に前半に怒涛のように流れてくるので、これは本当に湯浅監督の作品なのか?と疑いたくなるほどです。

なぜ港は生き返った?

きみと、波にのれたら (フラワーコミックス) (日本語) コミック (紙) – 2019/5/24

不慮の事故で亡くなった港。

しかし、水の側で『Brand New Story』を口ずさむと港が水の中に復活するということを、ひな子は発見しました。

復活したのはひな子にとってはよかったのですが、一体なぜ港は生き返ったのでしょうか。

そのヒントは二人きりのクリスマスで港がひな子に言った言葉にありました。

「オレがひな子の港になるよ。ひとりで波にのれるまで。」

引用:きみと、波にのれたら/配給会社:東宝

これを言い換えると「ひとりで波にのれるようになったらいなくなるけれど、それまではずっとひな子の側にいるよ」となります。

つまり、港はひな子が「ひとりではまだ波にのれない」と判断したからこそ、生き返ったのです。

だとしたら「波にのる」とはどういうことでしょうか?

「波にのる」に込められた意味

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「波にのる」に込められた意味を考察していきます。

社会の中でうまくやっていく

「社会の荒波にもまれて」などという表現があるように、「社会の中でうまくやっていく」という意味があるといえます。

例えばひな子がひとり暮らしをはじめた当初。

大量の荷物が高く積まれている部屋で作ったオムライスを食べようとしましたが荷物に押しつぶされてしまう、というシーンがありました。

これこそまさに「うまく波にのれていない状態」でしょう。

事故で亡くなったあとには、ひな子は社会とほぼ断絶したような状態になってしまいます。

これもつまり「うまく波にのれていない」のです。

ふたりの親密度

港はひな子と出会ってから本格的にサーフィンをはじめるわけですが、当然ながら最初はうまくいきません。

波にのっては落ちて、また波にのって…を繰り返します。

そしてうまく「波にのれる」状態になったときには、ふたりの親密度はすでにぐっと高まっていました。

「波にのれる」=「ふたりの親密度」とみることもできます。

3つの謎

きみと、波にのれたら 01 港&ひな子 場面写ver.(グラフアート) デカキャラミラー

ここでは本作に隠されている謎を本格的に解明していきたいと思います。今回は3つの謎に絞って考察を深めていきましょう!

メッセージを送った港の心境

ようやく港の携帯ロックを解除したひな子。携帯には亡くなる直前に入力して未送信になっていたひな子への想いが綴られていました。

「きみは僕のヒーローだ」と…。

なぜ「ヒーロー」なのか、それは直前のエピソードで全てが明らかになっています。

幼少期に溺れた港の命を救ったのがひな子だったのです。

これは全く劇中には描かれていませんが、港はおそらく自分が海で死ぬことを知っていたのではないでしょうか。

全く根拠はないのですが、彼の第六感とでもいうでしょうか。

命を救われた海でそして命を救ってくれた人に教わったサーフィンで、自分の命は終了するのだという覚悟のようなものがあったのかもしれません。

だからこそ溺れている人がいたときにまったく躊躇なく体が救助に向かったのではないでしょうか。

もう会えないと知りつつなぜ笑顔だった?

港は、無事「波にのって」ひな子たちが安全な場所に到着したことを見届けて、本当に安らかな笑顔で天に登っていくのでした。

さて、問題はなぜこのとき「笑顔」だったのか、ということです。冷静に考えれば、もう愛するひな子とはまったく会えなくなってしまうのです。

悲しいはずなのに、なぜ笑顔で去っていったのか。

それは、港がひな子の幸せを本当に想っていたからです。ひな子の幸せ=ひな子がひとりでも生きていけること。

そのために港は生きている間も、死んでからもサポートし続けてきたのです。

それは二人きりのクリスマスの夜にオムライスを食べながらつぶやくシーンからも分かります。

「オレがひな子の港になるよ。ひとりで波にのれるまで。」

引用:きみと、波にのれたら/配給会社:東宝

自分の力で力強く「波にのる」ということをやってのけたひな子。

そんな彼女を見て「ああ、もう俺がいなくてもひな子は大丈夫だ」と安堵したからこそ、笑顔で天に旅立っていったのです。

卵料理の意味

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劇中に何度も登場するのが「卵料理」というファクターです。

何度も登場するのだから必ず意味があると考えていいと思います。どれくらい登場するのでしょうか。

  1. ひとり暮らしの部屋で食べた失敗したオムライス
  2. 港がつくってくれた卵サンド
  3. クリスマスにふたりきりで食べたオムライス
  4. 港がいなくなった後に友だちが買ってくれた卵サンド
  5. ラストに食べるオムライス

なんと5回も登場しています!さて、それぞれどういう意味なのでしょうか。

ひとまず、卵料理を食べるときの状況を整理してみます。①~⑤の中で「ひな子ひとりだけ」で食べているのは①のみです。

他は全て「誰かと一緒に」食べています。

そして「ひな子ひとりだけ」で食べた①のオムライスは失敗した上に、荷物の下敷きになり台無しになってしまいます。

まったく良いことがなかったのです。

「ひな子ひとりだけ」で食べたときだけ良いことがなく、②~⑤の他人と食べている卵料理は基本的にはおいしく食べられています。

つまり「誰かと一緒に食べている」ときは「うまくいっている」といえますね。

そして、「卵料理」だという事がさらにキーポイントです。

「卵」には何があるか…「黄身」がありますね。

「黄身」=「きみ」。つまり「きみ(黄身)と一緒」のときは「うまくいっている」のです。

この親父ギャグみたいな分析を強固にしている要素があります。それはタイトルです。

「きみと、波にのれたら」ですね。

「きみ」=youなら「君」と表記すればいいはずです。敢えてひらがなで「きみ」としているのには上記のような理由があるのではないでしょうか。

二項対立のその先へ

ブロマイド写真★『バックドラフト』第17分隊/カラー/カート・ラッセル、ウィリアム・ボールドウィン、スコット・グレン

この映画にはたくさんの対立する事柄、つまり二項対立が存在します。

しかし、それらが完全に対立したままというよりは、新たな局面=第三項を創り出していこうという志向性がみられるのです。

まずは、二項対立の要素を挙げてみましょう。

名前

まず、主人公の名前です。

「港」という「水」を連想させる名前と「ひな子」という「ひ=火」が入っている名前との対立。

つまり「水」と「火」の対比です。

職業

港の職業は「消防士」いわば「水は友だち、火は敵」という職業です。

ひな子は最終的には「ライフセイバー」になります。

これはつまり「水から人を守る=水が敵」という職業です。

ここにも二項対立がありましたね。

命を救った側と救われた側

幼少期に溺れた港をひな子が救ったという出来事がありました。つまり、救われた側と救った側で真反対の立場ですね。

上記のような事項は決して対立したままではなく、ゆるやかに溶けていく様子が見てとれます。

名前でいえば、おたがいのフルネームを見ればわかります。

雛罌粟 港 (ひなげし みなと)向水 ひな子 (むかいみず ひなこ)

港の姓には「ひ」が入っていて、ひな子の姓には「水」が入っています。お互いが混ざり合っているのがよくわかりますね。

このようにただ対立し続ける二項対立ではなく、ゆるやかに混ざり合い第三項を創りあげているのが本作の特徴です。

まとめ

アメリカンブリキ看板 ライフセーバーはこちら純粋なラブストーリーとしても楽しめるうえに、謎解きしつつ鑑賞できる深遠な映画でもある本作。

本記事をご覧になった上でもう一度観てみるとまた違った映画に観えてくるかもしれません。それこそが映画の醍醐味です。

ぜひ試してみてください!