彼にとっての家族はトナカイのスヴェンであり森のトロールたちなのです。
オラフに対する家族的なつながりは意識されておらず、クリストフは自らのクリスマスの伝統であるスープ作りに余念がありませんでした。
そのような彼の意識はアナたちと全く共有されていません。伝統とはそもそもそのようなものなのです。
伝統とは
伝統とは小さなコミュニティで排他的に共有されている価値感なのではないでしょうか。
最も小さなコミュニティは家族です。家族の伝統は家族の思い出そのものといっても過言ではありません。
クリストフもアランデールの国民もそれぞれが自らの小さなコミュニティにおいてこの伝統をクリスマスに確認していました。
ここで重要なのはそのコミュニティの価値観である伝統を他者に押しつけようとしてはいけないことです。
クリストフの伝統がアナたちにとってはグロテスクなものに映ったとしても、クリストフに取ってみれば何者にも代えがたい大事なものなのでしょう。
真の家族愛
これまで見てきたようにオラフはアナとエルサの家族愛の象徴でした。
家族愛は絆でもあるといえます。その絆は例え世界中が敵になったとしても見捨てることのない強さを持っています。
思いやりや優しさよりも強いものかもしれません。ともすれば見失いがちなこの家族愛の重要性をこの物語は思い起こさせてくれるのです。
フルーツケーキが意味するもの
さてオラフはかき集めたそれぞれの家族の伝統を象徴するものを全て失いますが、最後にフルーツケーキだけが手元に残されます。
このフルーツケーキにはどのような意味があるのでしょうか。
唯一残されたフルーツケーキはおそらく「希望」です。オラフの伝統を探す冒険の旅は決して全て無駄ではなかったのです。
家族の伝統がないことに失望するアナとエルサに対してオラフは希望を見つけてきました。
二人には家族としての強い絆があり、オラフを媒体とする家族の思い出もあることを二人が見いだす切っ掛けを与えたのです。
単なる道化役だけではなかったオラフの存在
「アナと雪の女王」シリーズではオラフはどちらかといえば道化役といった役どころでしたが、今回は違いました。
オラフはアナとエルサを繋ぐ架け橋的存在だったのです。
彼のおかげで二人は家族の思い出と絆を再確認するとことができ、これからも家族の伝統を築いていくことでしょう。
それにしても我々は日常生活の多忙に紛れて、本当に大事にする必要があるものを見失いがちです。
これ以上は分割できない家族(場合によっては夫婦)というコミュニティは誰にとっても欠くことができない大事なものといえます。
この物語は短い物語の中で我々にこのことを教えてくれているようです。