出典元;https://www.amazon.co.jp/dp/B07RTZBGB6/?tag=cinema-notes-22/
アイルランド、アメリカ、イギリスの3国が合同制作した、史実に基づいた皮肉な愛憎劇である「女王陛下のお気に入り」。
そのラストシーンに込められた心理描写は、観る人によっては「意味がわからない」とスルーしてしまうほどの意味深さです。
ただ、実は登場人物と作品全体の構成を鑑みれば、そこまで難解ではないのです。
それでも「意味深で理解が難しい」作品であるのは、人間の感情を理解すること自体が難しいからでしょう。
そんなラストシーンを徹底解説していきます。
国際的に大絶賛
「女王陛下のお気に入り」は女優だけでなく、演出や脚本、豪華絢爛で凝った美術品の数々までもが国際的に高く評価された作品です。
アカデミー賞だけではない
アカデミー賞
ヨルゴス・ランティモス:監督賞
オリヴィア・コールマン:主演女優賞
レイチェル・ワイズ&エマ・ストーン:助演女優賞
デボラ・デイヴィス&トニー・マクナマラ:脚本賞
ヨルゴス・モヴロブサリディス:編集賞
サンディ・パウエル:衣裳デザイン賞
フィオナ・クロムビー:美術賞
オリヴィア・コールマン
- 第75回ベネチア国際映画祭での最優秀女優賞
- 第76回ゴールデン・グローブ賞
- 第72回英国アカデミー賞(BAFTA)
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/女王陛下のお気に入り
これほどまで評価された作品とはいったいどんな魅力のあるものなのでしょうか?
登場人物が隠し持つもの
史実に基づくとはいえ脚色された部分もあります。そして映画内ではほのめかす程度で済まされた部分もあるのです。
その隠された登場人物の裏の顔についてまで、まず解説していきます。
アン女王
スチュアート朝最後の女王であるアン女王は実在した人物で、17人子どもをもうけながらも全員育たなかったという記録も実際にあります。
アン女王は抗リン脂質抗体症候群であったともポルフィリン症であったともいわれています。
子どもたちが育たなかったことすら、これらの病気が原因だろうと一説ではいわれているのです。
音楽を美しいと感じていたのに耳鳴りがしてやめさせる、狂乱して叫ぶ、自殺をほのめかすなど精神不安定な部分が随所に描かれています。
これらの部分から、脚本家のトニー氏や監督のヨルゴス氏はアン女王がポルフィリン症であるという見解であったと考えられます。
「2人がわたしを取り合うなんて素敵」と語るアン女王は「嘘をつかない」サラの愛と「自分にとって耳触りの良い言葉を囁く」アビゲイルからの見せかけの愛との2つで揺れます。
ただしアン女王自身は「誰もわたしを愛していない」と頻繁に口にするように、アン女王自身のことも愛していないのです。
だからこそ余計に、自分が誰かに取り合われるような人間だと思いたかったのでしょう。
サラ
たくさんの役目を負う女性ですが、1番大切な役目はやはりアン女王が唯一心を許せる相手であったことでしょう。
これはアビゲイルが現れるまでブレることがありません。
「私を貪らないで=私はあなたの相手以外にもやることがあるのに」
引用:女王陛下のお気に入り/配給: 20世紀フォックス
こんな言葉を放つ一方で、アビゲイルがアン女王に近づいた際には嫉妬を惜しげもなく晒しています。
この部分から、サラ自身もアン女王に依存していたと考えられます。
依存されることに依存する、まさに共依存関係です。
それはアビゲイルと射撃に興じるシーンでアビゲイルがアン女王から指名されたのを見て、嫉妬でアン女王に迫ったことからも明らかです。