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【万引き家族】は、その衝撃的なタイトルからもインパクトやメッセージが強いことに加え、第71回カンヌ国際映画祭にて日本に最高賞のパルムドールを21年ぶりにもたらした作品としても有名です。
今回は、この作品が伝えたかった日本の社会が見て見ぬふりをしてきた「現代の闇」や「家族」のあり方について詳しく解説いたしましょう!
撮影中のタイトルは違った!
強烈なインパクトを与える作品のタイトル【万引き家族】ですが、実は脚本段階では「声に出して呼んで」であったそうです。
この「声に出して呼んで」というタイトルには、「お父さん」や「お母さん」と子どもに呼んでもらうことを切に願う主人公の想いが作品中に重点的に描かれたためでした。
【万引き家族】の意味
こちらでは、衝撃的なタイトルである【万引き家族】の「万引き」が示す意味について考察していきましょう。
家族で「万引き」をして生計を立てていた
家の家主である初枝は年金暮らしであり、労働可能な家族は働いているが日雇いであったり、アルバイトなどと定職には就かず低賃金かつ不安定な収入の中で「その日暮らし」をしています。
やはり、その不安定な暮らしだけでは生活することは難しく、生活費に不足した分を家族で「万引き」することで協力して生き抜いていたのです。
このことからも「万引き」という描写は、彼らの「生き抜く術」を象徴しているものとも推察できるでしょう。
家族も「万引き」してきた
治は、パチンコ店の「車上荒らし」をする中でぐったりとした幼い祥太を見つけます。
その状況から全てを察した治は、祥太をそのまま家に連れて帰るのです。
また、治と祥太は万引きの帰路に体中傷だらけで弱った少女に出会います。
帰宅させようかとも考えましたが、家の中から外に響く怒号に虐待の恐れを感じて家に連れてきたのでした。
その少女は「凛」と名付けられ、家族として一緒に生活をはじめます。
このことからもタイトルにある「万引き」は「”万引きしてきた人(連れ去ってきた子)”によって構成されている」という意味も含まれているように考えられるでしょう。
「家族の絆」も万引きされたもの
作品中で家族として生活をともにする人たちは実は「偽名」を名乗り、本来過ごすべき場所や人とは異なる場所で生活しています。
それぞれが本来いるべき場所で築くべことのできなかった「絆」を登場人物それぞれが実感している姿に「絆までも万引きしてきた」と表現しているようにも推察できます。