出展元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07D2GX43Y/?tag=cinema-notes-22
新参者シリーズ最終幕となる「祈りの幕が下りる時」は親子愛がテーマのミステリー映画でした。
- 何故博美は父親を殺す事が出来たのか
- 曾根崎心中との関係性
- 加賀恭一郎の「自分探し」
について紐解いていきましょう!
博美が父に贈った最後の愛情
疲れきったお父ちゃんを楽にしたい
父が灯油を小屋と自分にぶっかけ自殺しようとする姿を博美は止めますが、父の死への決心が強い事を悟りました。
元々私のせいでお父ちゃんは逃げ隠れして必死に生きる事になってしまった、だからこそ博美はせめて感謝の気持ちとして自分の手で父を安らかな天国へと送り出したのです。
ごめんね、私を守るために沢山辛い思いをさせちゃったね。
でも大丈夫。今度は私が父ちゃんを守るから。
引用:祈りの幕が下りる時/配給会社:東宝
「守る」という言葉は、「天国へ送り出す」ということなのです。
最愛の父を殺すことが最愛の父が一番望んでいることだなんてあまりにも屈辱です。
それでも博美が実行出来たのは父への感謝と、本当の意味で楽になってほしいという愛情が強かったからです。
実際に、首を絞められる前の忠雄は本当に柔らかで嬉しそうな表情でした。
最愛の娘が自分を楽にしてくれるのですから、これ以上の幸せは無いのです。
焼身自殺を試みた忠雄の心境
26年前夜逃げの最中、忠雄は電車の広告を見ながらお坊さんが火をつけて自決した話をし、博美にこう言いました。
よくそんな事できるよなぁ。同じ死ぬにしてもお父ちゃんなら他の方法を選ぶ。
焼け死ぬなんて、考えただけでもゾッとする。引用:祈りの幕が下りる時/配給会社:東宝
こう言っていたのにも関わらず、忠雄は小屋と自分自身に灯油をぶっかけて自殺しようとしました。
これは忠雄が相当な「覚悟」、鋼の意志を持っていたことが読み取れます。
焼身自殺を選ぶ理由は、顔が分からない状態になるので自分が博美の父だという事がばれないようにする為という事です。
少しでも娘と接点が出ないように、あれだけ嫌だと言っていた方法を選択したのです。
どんなに残酷な焼身自殺でも、娘の為なら迷わず決断出来る忠雄。
ここまで強い愛情を持てるのならばもっと幸せな形でお互い愛情表現が出来たらいいのにと、視聴者の誰もが思った事でしょう。
母への強い恨みを感じるシーン
加賀恭一郎が徐々に事件の本質に近づき、博美が自分の逮捕はもう目前だと感じます。
そう感じた理由は、加賀を自宅に招いて話をした時の事です。
帰ってもらった後、何かに気付いたかのように洗面所に行くとブラシを触って何かを悟ったような表情をしました。
これはブラシに髪の毛がついていないのを見て、お手洗いに立った登紀子がDNA鑑定の為に持ち出したのだと察したからなのです。
その直後の場面で博美は母のいる老人ホームへと向かいます。
そこで博美が放った言葉には、静かではあるものの非常に強い恨みが表れている事が分かります。
あんただけは許せへん。恨んでも憎んでも足らんわ。
あんたのせいで、お父ちゃんはな、お父ちゃんは…
あんたには地獄を味わってもらう。お父ちゃん以上のな。
引用:祈りの幕が下りる時/配給会社:東宝
決して取り乱す事なく手を出す事もなく、無表情のまま淡々と母親に畳みかける姿からは非常に強い執念を感じるシーンでした。
また、お父ちゃんがどうなったかを言わなかった部分は厚子に様々な事態を想像させる事で更に苦しめる事が出来るからだと想定できます。