この時点で精神は崩壊し始めていたのではないでしょうか。
彼女自身、自分が母親イヴに似ていると感じていたはずです。
だからこそ自分も母のようになることを恐れていました。
愛に飢えていたジョーイ
劇中ジョーイは子供を産むのを嫌がります。
幼い時に母に愛されたと感じたことがない子供は、自分の子供を愛せないといわれています。
自分の気持ちを長い間胸の奥にしまい続けていたジョーイは、実に不安定な精神状態だったはずです。
最も親離れ出来ていない人物ともいえるでしょう。
自分を取り戻したアーサー
生活感がないともいえる彼らの家はいわば「イヴの城」でした。
アーサーはそんなイヴの城の中で30年もの間、良き夫であり良き父親を演じてきました。
彼は別居を申し入れ、イヴと離れたことで自分を取り戻しています。
イヴから逃れたフリン
フリンは芸術家の姉たちとは一線を画し、女優として活躍している女性です。
華やかな外見と奔放な性格から姉たちのような悩みとは一見無縁に見えます。
しかし端役ばかりで女優としての限界を感じていました。
そうした憂鬱から逃れるためコカインに手を染めてしまいましたが、彼女は家族と上手く距離を置くことで自分の居場所を見つけています。
コカインをやっている女性を正常ということは出来ませんが、三姉妹の中では最も心が強い人物だったのではないでしょうか。
三姉妹は静けさを受け入れるのか
イヴの葬式を終えた三姉妹は、どんな心境で窓から静かな海を見つめていたのでしょうか。
海を見つめる彼女達はイヴの呪縛から解き放たれたように見えます。
三人がどこか吹っ切れた表情で、窓の外を見つめている姿が印象的です。
劇中の彼女たちの不安や葛藤がこの先なくなることはないかもしれません。
しかしこのシーンは静けさの中、母の「インテリア」だった彼女たちが自分を取り戻した瞬間だったのではないでしょうか。
彼女達にとってイヴは超えるべき試練だったのでしょう。
イヴが亡くなったことで、胸の奥につまっていた母への愛に気づき同時に自分を愛することが出来たはずです。
三姉妹はきっと静けさに包まれながら、全てを受け入れたのではないでしょうか。
リアルな家族を描いた名作
『インテリア』はどこにでもありそうな家族のすれ違いや葛藤を描いています。
人間の精神がどれほど脆く、不安定なものかを知ることが出来ました。
同時に自分の居場所を見つけることが大切であると気づかされます。