出典元;https://www.amazon.co.jp/dp/B07C7GY1C1/?tag=cinema-notes-22
dTVで連続ドラマとして放送されていたものが人気となり、ついに映画化された「不能犯」。
その人気は「主演が松坂桃李だから」というだけでなく、内容の厚さによるものでした。
連続ドラマの映画化となると内容が薄くなったり、わかりにくくなったりしがちですが、そんなことはありません。
以下ではその深い中身をもつ映画作品「不能犯」について徹底解説していきます。
宇相吹の力
映画の中では、宇相吹の能力は強力な「マインドコントロール」として説明されています。
残念か安心かはさておき、マインドコントロールに人を殺すほどの力があるとは証明されていません。
しかしながら、プラセボ効果、プラシーボ効果などというように、マインドコントロールが人体に作用することは否定できません。
視線で人は殺せる?
幸いにも視線で人は殺せません。
マインドコントロールに視線は必要なく、ただ純粋な思い込みが必要です。
殺意が濁っていると依頼した当人も死ぬというのも、映画を盛り立てるための設定でしょう。
純粋に思い込んだ結果動けないという事例は、アルプスの少女ハイジでクララが当初は立てなかったことにも描かれています。
たかが思い込みですが、思い込みは自分の体に大きく作用するのです。
人を殺す「思い込み」はいくつ?
宇相吹の招いた悲劇には、宇相吹のマインドコントロール以外にも「思い込み」がいくつもあります。
事件に関係ないものを含めるとそれこそ膨大な数の思い込みがあるので、ここでは事件に関するものだけを扱います。
さて、誰のどんな思い込みがいくつあったのでしょう。
1.木島のケース
悪徳金融業者の木島の事件では、木島は大量のスズメバチに刺されて殺されます。
出典:不能犯/配給:ショウゲート
ここでは、木島自身の「スズメバチに殺される」という思い込み1つだけです。
2.隣人トラブルから心中のケース
隣人である鳥森さん殺しをサラリーマンである羽根田が依頼したこの事件には、思い込みがたくさんあります。
羽根田(旦那)からの思い込みは?
旦那側から見た思い込みはもちろん、妻をかばうものがほとんどです。
- 妻は良い人間だという思い込み
- 妻はか弱い人間だという思い込み
- 妻は自分が守らなければならない人だという思い込み
- 妻は自分が愛した人だから絶対に悪いことはしないという思い込み
- 隣人の鳥森さんは新婚夫婦、特に妻へ興味のあるしつこいストーカーだという思い込み
この「妻への無償の信頼」が彼を殺人依頼へと駆り立てます。
鳥森さんからの思い込みは?
殺された鳥森さんの思い込みは当然ながらマインドコントロールによるものです。
しかし宇相吹のマインドコントロールにやすやすとかかってしまうほど彼の心が揺れていたのは、彼自身にも思い込みがあったからです。
- 違法薬物は絶対にしてはいけないという強い思い
- 自分は絶対に違法薬物には手を出さないという思い込み
そしてこれは思い込みではありませんが、町会長という立場で薬物に手が出せないからこそ、違法薬物への憧れがあったのでしょう。
これが宇相吹のマインドコントロールを簡単にした要因です。
3.矢田刑事のケース
矢田刑事の場合は、任意同行でマインドコントロールにかけて自殺に追い込むという手口でした。
これは河津村の息子の事件を宇相吹が知っていたからこそ成し得たものです。
この事件での思い込みは少ないでしょう。