もちろん直接宇相吹と関わり殺されていますから、それに関するものがほとんどです。
しかし違うものもあります。
体にできたアザや傷が顔の形をしている、という話は古来より妖怪の話として言い伝えられているのです。
そこには人間の後悔があります。
- 腕にムカデのような虫がいて、噛まれたという思い込み
- 傷や全身の関節に河津村の息子の顔が現れて恨みを吐いているという思い込み
- 収監された子供が自死を選ぶわけがないという思い込み
- エリートである自分が見たものはすべて事実であるという思い込み
最後のひとつが決定打です。
この思い込みからの後悔の念が、宇相吹の侵入を簡単にしました。
河津村側からの思い込みは?
矢田刑事の殺害を依頼した鑑識の河津村は、密かに息子を自死に追い込んだ矢田を恨んでいました。
その殺意は、宇相吹に「あなたの殺意は濁っている」と言わせるほどです。
出典:不能犯/配給:ショウゲート
彼は「殺したい」ではなく「復讐したい、息子の名誉を回復したい、偉そうな女を虐げたい」などの感情の方が強くありました。
- 矢田は気に食わない女だという思い込み
- 矢田が息子を殺したという思い込み
これらは思い込みとは少し違うものかもしれません。
しかし、息子の無念を晴らすためではなく自分のエゴを満たすための殺人依頼であったことは確かです。
そして河津村は同僚の前で宇相吹に殺人依頼したことを話してしまいます。
出典:不能犯/配給:ショウゲート
この場面転換は、矢田刑事殺人が自分の殺意によるものだとバレるわけがないという思い込みによるものでしょう。
そして階段で足を踏み外して死ぬときも、矢田は自分を恨んでいるという思い込み、もしくは宇相吹がそう思い込ませたものです。
4.優と理沙のケース
1番派手なのはこの事件でしょう。
また、 多数の人を巻き込み思い込みがたくさん発生しました。
優からの思い込みは?
- 理沙が自分の手紙を無視したという思い込み
- 理沙は自分を蔑んでいるという思い込み
- 理沙は自分と絶縁して幸せになりたがっているという思い込み
- 理沙の人生は順調だという思い込み
また、 理沙は宇相吹と関わった当人なので、たくさんの思い込みをさせられています。
理沙からの思い込みは?
- 病院食にオイルがかけられているという思い込み
- 婚約者が浮気をしているという思い込み
- 婚約者は優のことを妹と認めていない悪人だという思い込み
5.タケルのケース
多田刑事が最も衝撃を受けたのがこの事件でしょう。
更生したと思っていた青年タケルに裏切られ、更に宇相吹も登場します。
タケルからの思い込みは?
- 自分は宇相吹からは殺されないという思い込み
宇相吹に木島を殺させておきながら、自分は殺されないと思っていました。
これが最大の思い込みです。
多田刑事の思い込みは?
- タケルが更生したという思い込み
- 更生した人間はもう二度と悪の道へ落ちないという思い込み
信頼していた矢先に裏切られたことが、多田刑事の心を揺さぶります。
これらがストーリーの展開に関係する思い込みたちで、合計25個です。
悲劇が暗示するものは?
これらの事件の悲劇が暗示するものは一体何でしょうか。
それが最も直接的に現れているのは主題歌の歌詞です。
主題歌の歌詞を見てみると…
わかりやすいので1番のサビを見てみましょう。
なあ 愚か者たちよ ヤケになんのは早いよ
もう一度だけ考えてみろって
なあ 愚か者たちよ
それが泣くか笑うかの分かれ道だ
右か左か お前なら さあどうする引用元; 愚か者たち/作詞:松尾レミ・いしわたり淳治. 作曲:GLIM SPANKY.
主題歌に使われたのはGLIM SPANKYの「愚か者たち」です。
この「愚か者たち」は1番の冒頭で「人間たち」を指すことを示されています。
「もう1度考えてみろ」というメッセージがこれでもかというほど詰め込まれています。
これらの事件による悲劇はすべて、物事を部分的に見て判断し、宇相吹に殺害依頼をした結果起こっているのです。
もう1度冷静に考え、全体を俯瞰していればこんな悲劇は起こらなかったでしょう。
新人が生き残るのはなぜ?
ひとつひとつの事件が悲劇であるのは、関わる全ての人が死んでいるからです。