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【U・ボート】ラストの衝撃を通して監督が現代へ伝えたかった想いを考察!戦争の悲惨さや無情さを実感させる男たちの姿に注目

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00005FXNB/cinema-notes-22

1981年に公開され、翌年のアカデミー賞で監督・撮影・視覚・音響効果・編集・音響・脚色の6部門にノミネートされたドイツの戦争映画『U・ボート(原題:Das Boot)』。

数ある潜水艦を舞台にした映画の中でも、そのリアルさと臨場感からマニアからも高く評価されている作品です。

さらに本作品は、原作者が第二次世界大戦中に実際に取材を通して体感した生きる人々のリアルを描いた内容となっています。

今回は、1997年にディレクターズ・カット版も公開された『U・ボート』を、ウォルフガング・ペーターゼン監督が映画を通して視聴者に伝えたかった想いとともに考察していきます。

第二次世界大戦下のドイツ軍を描いた作品

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今回ご紹介する映画『U・ボート』は、1939年から1945年まで続いた第二次世界大戦下のドイツ軍を描いた作品です。

Uボートとは?

Uボート

タイトルにもなっているUボートとは、第一次世界大戦と第二次世界大戦に使われたドイツが保有している潜水艦のことを表しています。

この潜水艦に詰んでいたのは、魚雷という水中を自走して目標物を命中する水雷。

敵に見つかりにくいという特徴を持ち、メリットが大きいといわれていました。

しかし、実はデメリットも大きく、死傷者を大量に出した潜水艦でもあります。

取材を基に制作された映画

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『U・ボート』が誕生した背景には、実際にUボートに乗船した原作者の取材記録がありました。

実際にUボートに同行した原作者

『U・ボート』の原作者は、ドイツの小説家・ロータル=ギュンター・ブーフハイムです。

彼は実際に、1941年に海軍報道班員としてU-96という潜水艦に同行。そこで彼が行った取材を基に、制作されました。

映画に出てくる海軍報道班員のヴェルナー少尉は、ブーフハイム自身を描いたキャラクターです。

大切な人を想う乗組員の姿

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劇中で一番胸が苦しくなるのは、乗組員たちが自分の大切な人を思い出すシーン。

それぞれが大切な人の写真を持っていて、時折それを眺めている姿は観ている人の心を掴みます。

過酷なUボートでの生活

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映画の中で描かれるUボートでの、乗組員たちの生活はとても過酷なもの。ここではいくつか、その過酷さを表しているシーンをご紹介します。

狭く息苦しい艦内

艦内は、長い間そこで40人以上の乗組員が過ごすためかなりの広さがあると思っていた方も多いと思います。

しかし、映画を観ると分かるようにU-96はとても狭く息苦しそうな艦内です。

食事をしていても、誰かがそこを出る時には通路の人が立ち上がらなければならない程の狭さなのです。

命を落とすかもしれない上に、こんなに狭い艦内に押し込められる乗組員のストレスは相当なものだったはずです。

不衛生な生活

最初からラストまで見ると、乗組員たちの見た目がどんどん変化していくのが印象的。

どんどん服は薄汚れ、ヒゲも生やしっぱなしになる乗組員たちの姿はとても悲惨です。

また、途中乗組員たちの中には毛じらみに感染する人も出てきます。更にはカビがたくさん生えたパンを食べる人も…。

ヴェルナー少尉が映画の中で、自分の日記に悪臭に耐えられないとメモをするシーンがありますが、その不衛生さも監督はリアルに描きたかったのです。

極限状態の人間心理

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本作品は実際にUボートに同行した経験のあるブーフハイムが取材した内容を基に作られています。

そのため、そこで描かれている乗組員たちの心情がとてもリアルに伝わってきます。

戦争という、自分も命を落とすかもしれないという極限状態の人間心理は胸に迫るものがあります。

潜水艦の中で息を潜めている時の恐怖

劇中で最もハラハラするのが、乗組員たちが敵の船と接近した時だったのではないでしょうか。

徐々に大きくなるソナー音に、乗組員たちの動悸は激しくなり、冷や汗が額をつたう緊迫した瞬間です。

何度も攻撃を受けるうちに発狂しそうになる乗組員や恐怖に耐えられず、艦長の命令に従うこともできなくなった乗組員もいました。

敵国の人たちを見てショックを受ける乗組員

途中、U-96は敵国の船を破壊。乗組員たちは自分たちの船の上部から、敵国の船が沈みゆく姿を見ていました

どんどん沈む船。そして、そこから何とか生き延びようと火をまとった敵国の人たちが海へと落ちていきます。

いくら敵対する国の人とはいえ、自分たちと同じように必死に生きている人間。

命を落としていく彼らを誰も助けようとはしません。U-96の若い乗組員たちはその姿にショックを受け、涙を流す人もいます

戦争中でも、人の死というのは人間をこんなにも絶望に突き落とすものだということが分かるシーンです。

壮絶なラストは何を意味しているのか

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映画『U・ボート』が高く評価されているのは、壮絶なラストシーンが1つの理由となっていると考えられます。

最後に、そのラストを通じて監督が観る人に伝えたかった想いについて考察してみました。

救いようのないラスト

通過することが、かなり難関だといわれているジブラルタル海峡。U-96の乗組員たちは、その恐怖に怯えます。

その不安が的中し、敵から攻撃を受けるU-96。水圧に耐え切れるか分からない中、潜水艦は水深280メートルの海底に達します。

それでも艦長は諦めることなく見事に潜水艦を修復させ、水上まで戻ることができました。

助かったことを喜ぶ乗組員たちは、フランスにあるラ・ロシェルの港に到着。そこでは彼らを待ち受けるパレードが開催されていました。

しかし、その瞬間上空から敵の攻撃を受けます。次々に命を落としていく人たち。

ヴェルナー少尉は何とか命拾いをしますが、彼が目にしたのはU-96が海へと沈む姿を見届けた後に息を引き取った艦長の姿です。

絶望してその場にしゃがみこむヴェルナー少尉の姿が映し出され、この物語は幕を閉じます。

この救いようのないラストシーンに多くの人は衝撃を受けたのでした。

実際の出来事とは違うラスト

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実は、この救いようのないラストは実際のU-96の最後の姿とは異なっています。実在したU-96は無事に港に帰還します。

そして、艦長のモデルとなったヴィレンブロック大尉という人物も戦争を生き抜いているのです。

敢えてラストを変えた監督はどんな意図を持っていたのでしょうか?

戦争を決して美化しない

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このラストシーンには、戦争を決して美化しない監督の姿勢が表れています。

一見すると、命を落とすかもしれない状況から這い上がったU-96の乗組員たちはヒーローのような扱いを受けるかもしれません。

しかし、実際には戦争はそんな美しいものではないのです。彼らもまた、敵国の人たちの命を奪った人間でもあります。

無情に命を奪い、奪われる…それが戦争の姿。

監督は奇跡の帰還をラストに裏切ることで、映画を観たすべての人に「戦争はこういうものだった」ということを伝えたかったのです。

また、この作品を通してなんでも自由に手に入る今の世の中しか知らない世代への戒めのようなものも感じます。

人生を自分で選択するも、与えられるものの方が遥かに大きいのが今の世の中です。

選ぶ権利も与えられず、逃げも隠れもできない状況の中で生きなければいけなかった人たちがいたことを、忘れてはいけないのです。

そして実際の戦争を知らない人たちが増えている今だからこそ、この映画のように戦争を美化しない作品が必要なのではないでしょうか。