出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01I084WFC/?tag=cinema-notes-22
『キック・アス』で一躍有名になったマシュー・ヴォーン監督による痛快スパイ映画『キングスマン』。
イギリスとアメリカ合作の『キングスマン』は2015年に公開され『キック・アス』を上回るメガヒット作品となりました。
『キングスマン』は『キック・アス』に引きつづきレーティングR15+の映画となっています。
15歳以下の方には少々刺激が強いので、大人になるまで視聴を待ちましょう!
また、血が飛び散るアクションや度が過ぎるブラックジョークが嫌いな方にはおすすめできません。
やりすぎアクション大好き、悪趣味なブラックジョーク大好きな方にはまさにうってつけの映画です。
スパイとアクション、そして本場イギリスの紳士とブラックジョークをさらに楽しむために、映画を掘り下げていきましょう!
キングスマンの世界
『キングスマン』はイギリスが主な舞台となっています。
そして映画ではイギリスの階級意識がひとつの重要なテーマとなっていました。階級意識はやがて肥大し、選民思想へとふくれあがります。
まずは重要な概念である「階級意識」と「選民思想」について学んでみましょう。
階級意識とは?
「階級」とは、身分・地位・性質がおなじ集団のことです。
子どもは親とおなじ身分であり、親と同じような生き方をし、それが受け継がれていくと考えるのが「階級意識」です。
階級がちがうと、服装や生活習慣はもちろん、文法や言葉のアクセントまでもがちがいます。
見た目や言葉づかいを階級ごとにはっきりと区別させ、おたがい交流しないようにしているのです。
つまり階級を超えることは非常に困難なのです。
イギリスでは法的な階級制度こそ無くなりましたが、現代でも根強く階級意識が残っています。
三つの階級
具体的には、おおまかに三つの階級にわかれています。
- 上流階級 ( Upper Class)
- 中流階級 ( Middle Class)
- 労働者階級 ( Working Class)
「上流階級」は、王族・貴族など、由緒ある家柄の人々です。
「中流階級」は、知的労働者つまりホワイトカラーの人々です。
「労働者階級」は、肉体労働者つまりブルーカラーの人々です。
登場人物の階級
上流階級は下流階級を見下し、下流階級は上流階級を皮肉ります。おたがい相容れない存在だと思っているのです。
ランスロットになるための面接に集められた青年たちは、オックスフォード大学やケンブリッジ大学などの学生でした。
権威ある大学に入学できるのは、主に上流階級の人間です。
また、アーサーはキングスマンになるのは貴族階級の者がふさわしいと考えていました。
しかし、エグジーの父は労働者階級でありながらキングスマンの候補生になりました。
息子であるエグジーも父とおなじ階級ですが、ハリーがエグジーを引き立ててくれたおかげでキングスマンの候補生となりました。
そして最終的にはキングスマンになることができたのでした。
この映画はいうなればスパイ版シンデレラストーリーなのです。
ハリーが作中で挙げた『大逆転』『ニキータ』『プリティ・ウーマン』は、いずれも社会の底辺に生きる主人公が成功して出世していく物語です。
選民思想とは?
「選民思想」とは、自分の民族はほかの民族よりも優れており、多民族を導く使命がある、という思想です。
聖書では、イスラエル人(ユダヤ人)は神から選ばれた民族であると書かれており、彼らはそれを根拠にパレスチナをめぐって争っています。
また、ヒトラー率いるナチスは、ゲルマン民族の優越を主張して、各国に戦争をしかけていきました。これが選民思想の行き着く先です。
ヴァレンタインがパーティー会場で演説をするとき、「君たちは選ばれた人間なのだ」と言いました。そしてノアの箱舟の話を持ち出しています。
ノアの箱舟
ここでノアの箱舟の物語をおさらいしましょう。
ノアの箱舟の物語は旧約聖書に書かれています。
神は堕落した人間に嫌気がさし、洪水で全滅させることにします。
しかし正しい人であるノアとその家族だけは助けることにしました。
神はノアに指示して、大きな箱舟を作らせます。
ノアの家族とすべての動物のつがいをのせた箱舟は、大洪水を生き延びることができました。
選ばれた人間
ヴァレンタインは、自分に選ばれた人間は生き延びる価値があると自分の価値基準で決めています。
神を気取ったその態度は傲慢で幼稚なものです。
思慮深そうなアーサーでさえも、選民思想への強い執着から、ヴァレンタインの馬鹿げた計画に賛同してしまいました。
なぜアーサーはヴァレンタインの仲間になったのでしょうか? その答えは彼の最期の言葉と『マイ・フェア・レディ』に隠されています。
『キングスマン』と『マイ・フェア・レディ』
オードリー・ヘップバーンが主演した傑作『マイ・フェア・レディ』の物語は、映画『キングスマン』にとって重要なモチーフとなっています。
『マイ・フェア・レディ』はイギリスの階級社会をテーマに据えた映画です。
あらすじを確認してみましょう。
『マイ・フェア・レディ』あらすじ
下町で生まれたイライザは下町生まれの下町育ち。
仕事は下賤な花売り娘で、話す言葉は下町訛りのコックニー英語です。
イライザは教養もなく教育も受けていません。仕草は粗野でざっくばらんな性格をしています。