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スターウォーズといえば、スタートから40年以上にわたって続編が制作され続ける、ジョージ・ルーカス監督の代表作です。
しかし、この作品が最初に公開されたのは通し番号で言えば4作目でした。77年の公開までに、どんな紆余曲折があったのでしょう?
驚愕のエピソードも交えながら紹介していきます。
更に、主人公ルークの、ジェダイの騎士としての運命と、それによって得たものは何かについても、考察していきます。
きっかけは「フラッシュ・ゴードン」?
「フラッシュ・ゴードン」の映画化、挫折
ジョージ・ルーカスは 「アメリカン・グラフィティ」(1973年)を成功させました。
彼は次回作に人気コミックが原作のSF「フラッシュ・ゴードン」のTVドラマ(1936年〜40年)のリメイクを思いつきました。
しかしその時点で既に映画化権はイタリアの大物プロデューサーに取得されていたことが判明し、断念しました。
その代わりに、とオリジナルを書き始めました。これが何を隠そう、「スターウォーズⅣ」の原型になったのです。
色濃い黒澤明作品へのオマージュ
企画こそ断念しましたが、その名残は本編にさり気なく残されています。
「Ⅳ」の冒頭で長大な前日譚がスクロールされる箇所は「フラッシュゴードン」シリーズからヒントを得ていました。
つまりオマージュを捧げていた訳です。
そしてルーカス自身が深く影響された黒澤明監督作品のエッセンスが脚本やキャラクター設定の中にふんだんにミックスされた内容でした。
具体的には、
・オビ=ワン・ケノービ役は黒澤作品の常連である三船敏郎にオファーをしたものの、辞退された。
諦めきれず「Ⅵ」の制作時にもダース・ベイダー役をオファーしたが、やはりNG。原因はスケジュール上の問題だったそう。
・オビ=ワンとダース・ベイダーのデス・スター脱出直前の決闘シーンには侍同士の斬り合いの名残がある。
・「隠し砦の三悪人」の登場人物をモデルにメインキャラとなるCSPOやR2D2のキャラクターを考えついた。
・「用心棒」「椿三十郎」へのオマージュ的な場面も存在する。
ルーカスの半端ない黒澤明作品への憧れがあちこちに散りばめられています。
エピソードⅣが最初の1作目だった
シリーズ化の発想は当初からあった
ジョージ・ルーカスは、全9作の構想を着想当初から確固たるものとして持っていた訳ではありませんでした。
最初から全9作を完成稿として書き上げていたわけではなかったのです。
「Ⅳ」のストーリーが、一番わかり易く、シリーズものとしての契約を結びやすくなるだろうと判断し「Ⅳ」を最初の一作目としたのです。
77年に「Ⅳ」が公開されると、爆発的な大ヒットになりました。
取材が殺到し、ルーカスは各方面から続編の制作について訊かれるようになりました。
彼は、プレスに語りながら、全9部作の構想の詳細を具体化していったのが実情でした。
悩み抜いた末、全9作に決定!
80年の「Ⅴ」公開時には、既に「全9作を3年ごとに制作する予定だ」という記事さえ出回っていました。
実際に、オリジナルのフィルムに 「エピソードⅣ」のサブタイトルのクレジットが全米で追加されたのは1981年、公開から4年後でした。
ルーカスは94年のインタビューで語っています。「脚本を書き始めてすぐ、これは1本には収まりきらないとわかった。
スカイウォーカー家やジェダイ騎士団について語り切るには、最低でも9本、つまり三部作が3組必要になる。
そうすると最初の作品には、前日譚と後日譚があるはずだから、真ん中の三部作なんだ、と気付いた」と。
この発言に至るまでも、ファンや業界内のスタッフからの評価や状況の変化などにジョージは敏感に反応していました。
「六部作で打ち止めにしようか?」などと思い悩んだ時期を経ての決定でした。
テクノロジーの発展と大ヒットが実現した続編
77年の「Ⅳ」公開当時、大ヒットになるとは、ジョージ自身全く予期していませんでした。
有名な逸話ですが、仲間のスティーブン・スビルバーグに「スター・ウォーズ」と「未知との遭遇」印税率2.5%の交換を持ちかけたとか。
スピルバーグはその後、長年にわたって膨大な収入を手にすることになりました。ジョージは、自作に期待していなかったのです。
99年に映画化がようやく実現した「Ⅰ」「Ⅱ」は、70年代後半当時のSFX技術では制作不可能なことが最大のネックでした。
それが「Ⅳ」の爆発的な大ヒットがきっかけのSF映画ブームに後押しされた、SFX技術の飛躍的な進歩により、撮影が実現しました。
本作はビデオやDVD、ブルーレイや4Kリマスターなど、何度となくソフト化されています。
メディアが変わる度に最新のテクノロジーを駆使して、既存の映像の手直しや修復もなされています。
ジョージは「最初の三部作の時は、家庭崩壊寸前だった」とか、
99年に新三部作の制作を発表した時も「オールドファンから非難轟々だった」など、ストレスフルな日々を振り返っています。
まさに天文学的な成功を収めたのにもかかわらず、創作上の悩みは、今なお尽きないようです。
新三部作は再びルーカス・フィルム制作
最高の幕引きか、新たなる希望再び?
その結果 ジョージは一旦はスター・ウォーズの制作から手を引きました。
しかし…「Ⅸ」の制作後の新三部作の制作に再びルーカス・フィルムが制作に関わることを、2019年4月に発表しました。
ジョージ・ルーカス自身は75歳になりました。
レイア姫役のキャリー・フィッシャーや、チューバッカを演じたピーター・メイヒューは亡くなってしまいました。
他のオリジナルキャストも高齢化し、「Ⅷ」のようなカメオ出演さえ、無理が効かなくなってきます。
新旧ファンの間でも賛否両論ありますが、作るからには、最高の幕引きを熱望したいものです。
ルークだけの運命って何?
ジェダイの騎士の血
ルークは、ジェダイの騎士であった父は「戦死した」と聞かされ、叔父と叔母の家庭、いわゆる普通の家庭で育てられました。
しかし実際のところ、ルークの叔母は「いつか騎士の道に進むのでは」とルークの運命を半ば悟っていたように見えました。
学校を卒業して士官学校に入学し、反乱軍に入隊したいと言うルークを、何かにつけて家業を手伝わせ決断を先延ばしにさせていました。
叔母の「育ての親」としての本能を感じさせるような描写がありました。
平穏無事な日常を送らせたいと強く望んでたことがわかりますね。
ルークが、農作業を手伝わせるために購入したロボット、R2D2。
ある日、父の同僚であったジェダイの騎士、オビ=ワン(ベン)・ケノービへの、レイア姫からの伝言を偶然観てしまいました。
それがきっかけとなり、街のはずれで隠居同然だったベンに直接会いに行き、父親の秘話を知り、フォースとも出会うことになったのです。
オビ・ワン・ケノービ(アレックギネス)は、生き別れたルークの父親アナキンの同僚のジェダイの騎士でした。
彼が、結果的にルークをジェダイの道に誘うことになります。
ルークの生涯的なテーマとは?
ルークに課せられた課題とは
「いつまでも師匠(オビ=ワンや、ヨーダ)の言いなりではなく、自立して一人前のジェダイになること。」
トリロジー(エピソードⅣからⅥ)に限ると、これが、この戦いでルークに課せられた最大の課題でした。
徐々に明らかになるダース・ベイダーの正体(ダークサイドに堕ちたアナキン=誰あろうルークの父親その人)との対決と葛藤。
実の妹であるレイア姫との邂逅。
このルークにしか起こりえない運命的な、血筋のしがらみと対峙することで、ルークは精神的にも急激に成長していきました。
最後には自身の手で父親=ダース・ベイダーを倒し、文字通り一人前のジェダイの騎士になり得たのです。
オビ=ワンの死でルークは何を得たのか?
ジェダイの騎士となる決断
ルークは帝国軍に育ての叔父夫婦を殺され、住まいも壊滅されてしまいました。
衝動的にオビ=ワンと共に、レイア姫を帝国軍から救出するための旅に出ることになります。
ルークは、旅に出た当初はフォースを体得してジェダイの騎士になることについては、まだ半信半疑で本腰が入らない印象でした。
しかしデス・スターからの脱出直前、ダースベイダーと一騎打ちをしたオビ=ワンがとどめの一撃を受けるのを目撃してしまいます。
オビ=ワンが姿を消した直後から、ルークの心にオビ=ワンの声が聴こえるようになりました。
「Ⅳ」のクライマックスの空中戦の肝心な場面で、ベンの声がルークの迷いを解き反乱軍の勝利を導きました。
オビ=ワンは自らの死で、ルークがジェダイの騎士として独立独歩で歩み始める最大のきっかけを与えました。
そしてルークは自らの手で、それを見事に勝ちとった、といえるでしょう。