ほかにも理由が考えられます。エイリアンは猫を見るのがはじめてだったのかもしれません。

だから、どんな生物なのか観察するためにまじまじと見つめていたともいえます。

制作裏話

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以上に述べたように、猫のジョーンズをエイリアンが見つめていた理由は、ストーリー的にみるといくつか理由が考えられます。

しかし、あのシーンには制作側の都合もありました。

三つのラスト

エイリアンのラストには三つの候補がありました。

候補1:乗組員全滅(リプリーはエイリアンと戦って一緒に死ぬ)

候補2:猫のジョーンズかリプリーにエイリアンが寄生して、地球に帰る

候補3:リプリーが勝つ

映画は候補3が採用されました。

監督のリドリー・スコットは、候補2を希望していたようです。しかし、20世紀フォックスはリプリーが助かるハッピーエンディングを求めていました。

この裏話にはさらに裏話があります。

さらに裏話

リドリー・スコットが電話で結末の筋をスタジオに話すと、非常に長い気まずい沈黙が……。

そのあとすぐにスタジオの幹部がやってきて、もし結末を変更しないならこの場で解雇すると言ったそうです。

『エイリアン』はまったく新しいタイプの映画だったので、無難な結末で収めたいというスタジオ側の意向が採用されたことになります。

ただ、のちにリドリー・スコットはリプリーが助かるエンディングのほうが良かったと考えを改めたようですね。

猫のジョーンズの伏線

つまり、スコット監督は映画のラストとして猫のジョーンズにエイリアンを寄生させることを考えていたのです。

その伏線のためにあのシーンを撮ったのでした。

結果的には違うラストになってしまいましたが、ジョーンズを殺さず寄生もしなかったエイリアンの行動の理由はきちんと筋が通るようになっています。

エイリアンは純粋な生存と生殖のみにしか興味がない、ということです。

このように、最初のアイディアから変更した事柄が『エイリアン』にはいくつかあります。

路線変更がいい方向に向かった例として、リプリーがシャトルで脱出したあとの展開の変更をご紹介しましょう。

消されたシーン

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映画では、シャトルで脱出したリプリーは安心して服を脱ぎ下着姿になりました。

そのあと、エイリアンを発見して慌てて小部屋に逃げ込み、最後にはエイリアンを宇宙空間に出すことに成功します。これが最終的に採用された案でした。

以下は採用されなかった案です。

このシーンでは、もともとのアイディアとしては、リプリーは全裸になる予定でした。

そして、エイリアンがいることに気づいたリプリーはガラス張りの部屋に逃げ込みます。全裸のリプリーとエイリアンがガラス越しに対峙します。

リプリーの体をみて、エイリアンは自分の体とちがうことに気づき、不思議そうに自分の体とリプリーを見比べる……というものでした。

エイリアンの魅力

この案が採用されなくて本当によかったですね。

もしこんなシーンが入っていたら、のちのエイリアンシリーズはなかったかもしれません。あったとしても、方向性の定まらない中途半端な駄作になっていたでしょう。

エイリアンの魅力は、まったく共感できない未知にこそあるのです。

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