椿姫は高級娼婦のヴォレッタが青年貴族アルフレードに愛される話です。
ヴォレッタとアルフレードは恋におち、彼女のパトロンである男爵に嫉妬心を抱かせます。
結核に侵されている彼女はアルフレードを思い彼の元を去りますが、真実を知ったアルフレードが彼女の元へ戻り、その腕の中でヴォレッタは息を引き取ります。
ストーリーはまさにムーラン・ルージュですね。
そしてこの椿姫のモデルになったのが、1840年代にフランスを虜にした高級娼婦マリー・デュプレシです。
マリー・デュプレシも23歳という若さで肺結核に侵され命を落としました。
ラストシーンが意味するもの
劇中では、クリスチャンとの愛を確認したサティーンが肺結核の為に彼の腕の中で息を引き取ります。
この結末が物語るものは一体何でしょう。
コントロール不可能な人生を乗り切るか否か
「ムーラン・ルージュ」の元になったオルフェウス神話では、自分のコントロールできない不幸(妻の死・蘇りの失敗)に直面した時に乗り切れるか否かを明確に表示しています。
オルフェウスは妻の死から立ち直ることが出来ずに、しまいには嫉妬した女性達に八つ裂きにされてしまいます。
劇中でクリスチャンは二人の愛の物語を執筆し完成させて幕を閉じています。
その後クリスチャンはどう生きたのでしょうか。神話と同じ道を進むなら命を絶ち愛する人と黄泉の国で結ばれることになります。
それともサティーンとの愛を胸に生き続けたのでしょうか。観るものに委ねられる結末です。
生きることや愛することの素晴らしさ
劇中では下記のセリフがキーワードになっています。
生きるって素晴らしい。あなたと分かち合うこの世界。
引用:ムーラン・ルージュ/配給会社:20世紀フォックス
本当の愛を知らずに生きてきたサティーンが、真実の愛を知り生きていると実感していく姿も見どころのひとつです。
人間は限りある時間の中を生きています。その限られた中でどう生きるか、愛し愛されることの素晴らしさを感じさせてくれます。
サティーンが結核で命を落としたからこそ、限られた時間をどう生きるかというメッセージが浮かび上がってきます。
ヒロインの死は作品に強いメッセージ性と重みを与えました。
なぜサティーンは結核の設定だったのかを深読み
結核という病気は現代にも影を落とす病気です。しかしなぜサティーンは癌などの病気ではなく結核だったのでしょう。
時代背景
結核はかつて白いペストと呼ばれ、不治の病とされていました。
「ムーラン・ルージュ」の舞台となった19世紀も結核は世界中で猛威を振るい恐れられていたのです。