なぜこんなにも「ローマの休日」のラストシーンが話題になるのでしょう。
それは、この映画の背景に大きな社会問題が絡んでいる為ともいえます。
知れば知るほど、作品が深みを増す裏事情を見ていきましょう。
赤狩りという名の束縛
「ローマの休日」が作成された時代背景を覗いてみると、アメリカがちょうど「赤狩り」を実行していた時代と重なります。
実は自由の国アメリカにも、言動を規制されていた暗い過去が存在します。
赤狩りとは第二次世界大戦後に行われた政治的弾圧で、アメリカ政府を中心に共産主義者を排除する動きです。
ローマの休日を執筆した「ハンター」という人物は本名を「ダルトン・トランボ」といい赤狩りによって投獄された過去を持っています。
監督であるウィリアム・ワイラーは、赤狩りによってハリウッド映画がダメになる、言いたいことも言えない映画になると嘆いていました。
赤狩りからの脱出
赤狩りは映画界に大きな影響を与え、政府が認める映画しか制作できなくなっていました。
そこで監督ウィリアム・ワイラーは、共産主義者と呼ばれる役者やスタッフを連れてアメリカを脱出しローマで撮影を行っています。
実はブラッドレー役のグレゴリー・ペックも、反赤狩り派の人物でした。
制作の裏にはこのような自由への想い、社会への反骨心が隠れていました。
平和を望む人と人のつながり
「ローマの休日」は第二次世界大戦の7年後に撮影されています。
主演女優のオードリー・ヘプバーンは戦時下ナチス側に住む人間でした。
映画スタッフやキャストは、各々戦時中に敵味方の存在だったのです。
そんな彼らは映画のラストシーンに下記のセリフを盛り込みました。
「国と国との友好の見通しについてどうお考えですか?」「人と人との友情を信じるように、必ずなし得ることだと信じています」
引用元:ローマの休日/配給会社:パラマウント映画
アン王女のセリフには、過去は過去これからは個人レベルで手を取り合って仲良くしていけば、国同士もいい関係になれるという強いメッセージが込められています。
ローマの休日が生んだ人気アイテム
世界中で大ブレイクした「ローマの休日」からは、数々の人気アイテムが生み出されました。
驚くべきことは、それらが今も愛され続けているということです。
イタリアが観光地として世界中に認められた
映画の舞台となったイタリアのローマが、世界中から注目を集めたことはいうまでもありません。
映画の放映後、撮影地となった場所はいずれも多くの人だかりとなっています。
その影響は現在までつづき、観光地は多くの人で賑わっています。
真実の口の占いマシーンが出来た
劇中に登場しアン王女を驚かせた真実の口は、その後世界中の人が手を入れに訪れました。
その結果、口の周辺がすり減ってしまい口のサイズが大きくなっているのだそうです。
ちなみにあの有名な顔はギリシャ神話の海神トリトーンのものです。
国内では、真実の口の人気にあやかった「真実の口型占いマシーン」が多く設置されました。