本作はピアニストとしての成功を描くと共に、父親との関係にもフォーカスを当てています。
デイヴィッドの父親は息子の愛し方を知らない男でした。
子供は思い通りにならないもの
親がよく錯覚する子育ての間違いがあります、それは自分の子供を思い通りに操ろうとする行為です。
ピーターはまさにこの間違い子育ての実施者でした。
僕はネコ、ネコの気持ちが良く分かる
引用:シャイン/配給会社:KUZUIエンタープライズ
上記のように思う息子に対して、ピーターはもっと強くなれと教育します。
ピーターの中ではラフマニロフが弾ける=強い人間なのです。
子供の個性を見ようとしない結果が、親子間の溝を大きくしていきました。
息子依存が強かった
劇中でデイヴィッドに留学話が持ち上がると頑なに反対していました。
息子の成長を願うならばその背中を押してやればよさそうなものですが、ピーターにはそれができないのです。
おそらくデイヴィッドをアメリカへ送り出してやりたいという気持ちもあったはずです。
しかしデイヴィッドを手離したくないという気持ちが勝ったのでしょう。
完全なる息子依存症です。
家族を失うのが怖い
留学したがるデイヴィッドに対してピーターは下記のセリフを口にしました。
家族を壊すのか?
引用:シャイン/配給会社:KUZUIエンタープライズ
ホロコーストで両親を失ったという過去の経験から、家族を失うことを恐れていたのかもしれません。
2度目の留学話が持ち上がったとき、デイヴィッドはピーターの愛情を感じると共に息苦しさも感じています。
父親ピーターの愛情が足枷になっていたのです。
父親が息子を家にいれなかった心境
ラフマニロフを弾き倒れたデイヴィッドですが、なぜ父親は家に入れることを拒否したのでしょう。
家族を裏切ったと感じていた
反対を押し切り留学した息子に対して、家族を裏切ったと考えていたのでしょう。
そして言葉通り勘当した状態だったのです。
強い愛情が、そのまま裏返しの強い憎しみに変わってしまったのかもしれません。
父親としての意地
考察していくと、デイヴィッドからの手紙を無視したり助けを拒んだりする裏には父親の意地が隠れているようです。
厳格な父親像として描かれているピーターは、勘当した手前簡単に和解することは出来なかったのでしょう。
いいかえれば、父親のエゴです。
更に上記したように男子ならひとりで乗り越えろ、という思いがあったのかもしれません。
しかしやはりこの思いは、優しく繊細なデイヴィッドの個性には合っていない方法でした。