それをドライバーはサソリのようだったと例えたのです。
自らの目的を遂げる為、多くの人物の背を借りたニーノは、背を借りた人物(カエル)を殺したことで川を渡ることが出来なかったのです。
そして自らの背にもう一匹のサソリ(ドライバー)が乗っていることを知った時には、彼は帰らぬ人となりました。
アイリーンとの未来は途絶えた
ラストで、ドライバーは血まみれの状態で走り去ります。
アイリーンと描いた未来はどうなってしまうのでしょう。
ドアフォンを押すアイリーン
ラストシーン、ドライバーの部屋のドアフォンを押すアイリーンの姿がありました。
アイリーンは、ドライバーとこの先一緒に生きていきたいと思っていたのでしょう。
ドライバーの狂気を目の当たりにして慄いた彼女でしたが、それでも彼を受け入れようとしたのです。
彼女は服役するような夫と結婚していた女性です。
アンダーグラウンド的な要素を持っていたことでしょう。
ドライバーが思うより、彼女は強かったのかもしれません。
もしもドライバーが生きて戻ったら、殺人者となったドライバーでも愛せる女性だったのではないでしょうか。
性で人を不幸にする存在と気が付いた
もしもアイリーンの想いがドライバーに届いたとしても、彼はアイリーンとの別れを選んだはずです。
ドライバーは自分を最強のカエルだと思っていました。
その背に犯罪者を乗せ川を渡らせることのできる唯一のカエル、しかしドライバーの本質はサソリだったのです。
彼は、自分に関わるものを不幸にしてしまう性を持っています。
自分自身でもサソリの性に気が付いたのかもしれません。
アイリーン達の幸せを望む彼は、生き残っていても彼女に連絡はしないでしょう。
難解で魅力的な映画
「ドライヴ」はニコラス・ウィンディング・レフン監督の独特の世界観を楽しめる映画です。
少ないセリフがストーリーを難解に感じさせますが、同時に観客の想像力を高めます。
変えられない人の性を見事に描いた作品といえるでしょう。
鑑賞後になんともいえない不思議な余韻を与える本作は、映画の新たな一面を見せてくれました。