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『初恋』は1968年に起きた府中三億事件を題材にし、実行犯が女子高生だったらと仮定して制作された映画です。
府中三億事件は、未解決のまま様々な見解が示されています。
本作品ではラブストリーとして府中三億円事件を描いていますが、この事件はみすずと岸にとってどんな意味があったのでしょう。
岸は本郷に戻る気はなかったのか、メモを見つけたのは偶然なのか……。
『初恋』に隠された多くの謎を徹底考察していきましょう。
二人にとっての三億円事件とは
三億円事件を犯したみすずと岸ですが、それぞれの真意は何だったのでしょう。
二人はお金が欲しかったわけではない
三億円という大金を窃盗したみすずと岸ですが、彼らはお金に困っていたわけではありません。
1975年12月10日、三億円事件は時効を迎えた。盗まれた紙幣は未だに一枚も使われていない
引用:初恋/配給会社:ギャガ
お金を使用した形跡はないまま時効をむかえたのです。
勿論、お金から足がつかないようにしたのかもしれませんが、彼らはこれからも盗んだお金を使用することはないのかもしれません。
二人にとって、三億円の窃盗はお金目的ではないのです。
岸にとっては社会への反発だった
『初恋』に描かれた時代は、学生運動が盛んな時期です。
岸は警察からの暴力や国家権力の理不尽さ、社会の横暴さに不満を抱いていました。
暴力を使用せずに三億円を盗み取るということは、岸にとって国家への反抗であり、大金を得ることは結果論となるのです。
強盗の際に自分の知力のみを使用したのは、国家権力の横暴な態度をあざけり笑うためだったのでしょう。
父親への反発
父親が現役の大臣をしている岸は、父親=国家権力だったはずです。
親の権力で不都合なことはもみ消すことができました。
そして同時に理不尽な親の権力に反感を感じていたのでしょう。
岸は父親の呪縛から逃れることのできない自身にも嫌気がさしていました。
いま自分がいるこの環境を変えたいと思っていたはずです。
その反発心が国会を揺るがし、日本中を震えさせるような三億円事件へと繋がりました。
みすずにとっては恋の為
犯行の話を持ち掛けられたみすずにとって、三億円強盗は岸との繋がりを保つための手段にすぎません。
孤独に生きてきたみすずが見つけた光こそが岸だったのでしょう。
例え犯罪だとしても、彼との共同作業に幸せを感じていたのです。
みすずの若さと孤独さが、彼女を犯罪に引き込んだといえます。