一見魔法使いが自由に暮らせる世界を提案しているように見えますが、実はこの演説には人々を魅了するトリックが隠されていたことに気づきましたか?
論理的に見えて実は洗脳に近い巧みな話術
演説で大切なことは、聴衆から賛同を得ることです。そのためには説得力のある理由が必要です。
グリンデルバルドは作中でも次のように語っています。
「自分たち魔法使いは高みに生きる選ばれた者であり、マグルは戦争によって権力を得ようとする暴力性がある者だ」
引用:ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生/配給会社:ワーナー・ブラザース
魔法使いを善とし、マグルを悪とすることで、より大いなる善のために一緒に戦おうと提案するのです。
しかし、戦争によって権力を得ようとしているのはグリンデルバルド自身です。
戦争を引き起こすことで人間界も魔法界も支配下に置こうとしています。
グリンデルバルドを含んだ魔法使い全体が善であるとすることで、裏にある本来の目的が見えなくしようという魂胆なのです。
相手を自分の方に引き込む魔術
グリンデルバルドの演説をさらに説得力のあるものにしているのが「ドクロのパイプ」です。
演説中にこのパイプでキラキラした煙を吐き出し、戦車や原爆など戦争をイメージさせる映像を映し出していました。
実はこれにもトリックがあり、作品の造形美術監督であるピエール・ボハナは、ドクロのパイプについてこう解説しています。
「グリンデルバルドが使う、水たばこのパイプのようなもので、精霊(spirits)を吸い込んだり吐き出したりする魔法の道具。使い方はちょっと複雑」
引用:http://www.pottermania.jp/info/event/log2018/181002Pierre_Bohanna_Fan_Event_In_Tokyo.htm
ドクロのパイプは演説の他にもクリーデンスを仲間に引き込んでダンブルドアを倒すという計画を側近たちに話す場面でも登場します。
つまり、グリンデルバルドの話に引き込まれる理由は、その巧みな話術に加えて魔法も使っているからなのです。
使い方が複雑という点からも、他の人にはなかなか使いこなせない道具だということが分かります。
話術と魔術によって人の心も支配してしまうグリンデルバルドは、やはり最も恐ろしい魔法使いなのです。
グリンデルバルドの演説で思い浮かべる人は?
冷静に聴衆の目を見ながら語り掛けるグリンデルバルド。この演説を観てある人物が思い浮かびませんでしたか?
そう!ナチスドイツの独裁者、アドルフ・ヒトラーです。
アドルフ・ヒトラーとは?
ヒトラーは首相に任命されてからわずか1年程度で独裁指導体制を築き、第二次世界大戦を引き起こした人物です。
彼は話術と人心掌握術に長けており、その力によってドイツの総督にまで上り詰めました。
ヒトラーは白人至上主義を掲げ、混血が生まれることを避けるためにユダヤ人の大量虐殺を行ったことでも有名です。
グリンデルバルドはファシズムの象徴
巧みな話術で魔法界と人間界を引き離そうとするグリンデルバルドは、ヒトラーの考えと同じです。
魔法使いをナチスドイツ、マグルをユダヤ人と仮定してみましょう。
すると、演説後世界各国に散らばった魔法使いたちはマグルの迫害を行うことが予想できます。
ハリー・ポッターがダークファンタジーに進んでいったことを考えると、本作品も暗い展開を覚悟した方が良いかもしれません。
グリンデルバルドの演説のもう一つの暗示
実は、グリンデルバルドには現代社会の問題も投影されています。それは、イギリスのEU離脱問題です。
イギリスのEU離脱問題とは?
イギリスは2016年にEUから離脱することが国民投票によって決まりました。
EUとは第二次世界大戦によって被害を受けたヨーロッパの国々が、協力して安定した世界を作ることを目的にした連合です。
これによりEUの加盟国間では共通通貨のユーロができ、国の行き来が自由になり、輸出入での制限がなくなりました。