聖司の製作したバイオリンを見て雫が「魔法みたい」と表現するシーンでは、聖司が「よくそんな恥ずかしいこと言えるよな」と答えています。
また聖司もイタリアへ出発する前に「雫の歌を歌ってイタリアで頑張る」というロマンチックな気持ちを素直に口に出して言っています。
杉村が雫に素直に「好きだ」と告白するシーンも印象的です。
こういったセリフは実際には恥ずかしくてなかなか言えない言葉ですが、合理的に考えたりせず感じたことを素直に伝えることが大切だということを私たちに教えてくれています。
「耳をすませば」の続編?「猫の恩返し」との関係
ジブリ作品の中で「耳をすませば」と関係性の深い作品に「猫の恩返し」があります。
「猫の恩返し」は宮崎駿監督が「耳をすませば」の原作少女マンガ作家である柊あおいに依頼して書き下ろされた「バロン 猫の男爵」が原作となっています。
「耳をすませば」の原作に大幅な設定変更を加えて映画を制作したことで、続編ともスピンオフともいえる「猫の恩返し」が生まれたのかもしれません。
2つの作品には「猫」という共通点があります。
「耳をすませば」の中で雫は電車で出会ったムーン(猫)の後をついて行きアトリエ「地球屋」へと入り込みます。
そして「猫の恩返し」では猫の事務所に主人公を導いているムタ(猫)が登場します。
猫のムーンは「耳をすませば」の中で別の家からはムタと呼ばれているので同じ名前で登場させているようです。
「猫の恩返し」は小説家を目指す雫が書いた物語とも考えられますが、もしそうであればストーリーの中に自分が実際に体験した出来事も織り込んで描いているということになります。
まとめ
一つの少女マンガがきっかけで生まれたジブリ作品「耳をすませば」について、原作からの設定変更がもたらした効果やラストのセリフに込められた意味を徹底解説しました。
「耳をすませば」は原作をもとに設定変更を加え、夢と現実の間で葛藤する敏感な思春期を描くことで私たちにさまざまなメッセージを伝えています。
少年少女に伝えるメッセージだけでなく、思春期の子どもを持つ親にもメッセージが込められたジブリ作品となっています。