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【キリング・フィールド(ネタバレ)】ピュリッツァー賞受賞の陰に隠されたプランへの想いを徹底考察!時代背景も把握しておこう

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01CUA16LE/cinema-notes-22

カンボジア。

1970年代後半ポル・ポト政権下で反米・救国を掲げる共産勢力クメール・ルージュの手により200万とも国民の3分の1ともいわれる自国民が虐殺された内戦がありました。

映画「キリング・フィールド」は、この内戦に巻き込まれたアメリカ人ジャーナリストと彼の助手として活躍したカンボジア人が主人公。

二人の運命が翻弄される激動の体験を実話に基づいて描いた作品です。

監督はこの一作で映画史に名前を残すことになったイギリス人のローランド・ジョフィです。

作品は1984年のアカデミー賞助演男優賞(プラン役のカンボジア人、ハイン・S・ニョール)、撮影、編集賞を獲得しています。

大国のイデオロギーのハザマに転落した小国に起きた歴史的ジェノサイド。

この影に実在した、ジャーナリストと助手の過酷な運命と固い友情の道をたどることは現代に生きる私たちにも貴重な体験となるでしょう。

歴史的背景

1970年代のインドシナ半島・共産化を止めたいアメリカ

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1970年、カンボジアでは君主シハヌーク国王の不在を突いてロン・ノル将軍が政権を掌握します。

そして軍事政権を敷きシハヌーク勢力と対立しました。ロン・ノルの背後にはアメリカがいました。

アメリカは隣国ベトナムで北の共産勢力およびベトコンと戦っており、インドシナ半島共産化を防ぐためにはカンボジアに親米政権が必要でした。

一方、北ベトナムとカンボジア国内のポル・ポト率いる共産勢力クメール・ルージュの背後には毛沢東思想で急激に影響力を拡大してきた中華人民共和国の存在がありました。

この結果、北ベトナムは親米政権としてのロン・ノルのカンボジアを爆撃します。

激怒したロン・ノルはカンボジア国内にいたベトコンを虐殺した上、アメリカ軍の自国爆撃を許します。

こうした状況下で北ベトナム(中国)に後押しされた共産主義勢力クメール・ルージュはカンボジア国内で勢力を伸ばしていきます。

シハヌーク陣営がポル・ポト勢力になびいたことも大きかったといわれいてます。

1973年にアメリカがベトナムから撤退。1975年には事態が一気に進展します。

後ろ盾を失ったロン・ノルは国外に亡命、南ベトナム・サイゴンが陥落し、カンボジアの首都プノンペンもクメール・ルージュの手に落ちます。

映画「キリング・フィールド」は、このプノンペン陥落の頃からポル・ポト支配下のカンボジアが舞台となっています。

作品の主張

アメリカ人記者とカンボジア人助手

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映画は実在の二人の運命を描いていきます。

ベトナム戦争やカンボジア内戦を取材していたニューヨーク・タイムズの特派員記者シドニー・シャンバーグと彼の通訳で助手のカンボジア人、ディス・プランです。

プランは勇気ある助手で、シャンバーグ記者をよく理解した上で彼が良い記事を書き、写真が撮れるように献身的なサポートをしていました。

彼らのチームワークと勇気のおかげでアメリカ人はカンボジアで何が起きているかを知ることが出来たのです。

プノンペンにクメール・ルージュが迫って来ました。外国人らが次々と国外へと脱出していきます。

プランは自分もジャーナリストであるという矜持とシャンバーグを助けるため、家族のみアメリカに脱出させ、自分は一人残ったのでした。

二人は二人三脚のコンビでシャンバーグ記者にとってはプランは無くてはならない存在でした。

そんな二人の前にクメール・ルージュの攻撃が迫ります。

攻勢に出るクメール・ルージュ

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二人を含む外国人特派員たちはカンボジアのかつての宗主国フランスの大使館に避難しますが、クメール・ルージュの手は大使館にまで及びます。

パスポートがないプランは、仲間の特派員たちの応援もあり、ニセのパスポートを作ります。

しかし、自前で現像した証明写真が感光して消えてしまい、万事休す

シャンバーグはアメリカに帰ることが出来たものの、プランはクメール・ルージュに捕らえられ集団農場へ送られてしまうのでした。

アメリカに帰ったシャンバーグ

大きな賞を獲ったものの

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シャンバーグはニューヨークに帰ってからも、カンボジアの体験を記事にして告発を続けます。

これが評価され彼はジャーナリストとして最高の栄誉であるピューリッツァー賞を受賞します。

しかし、シャンバーグの心は重かったのです。

一人カンボジアに残して来てしまった戦友ともいうべきプランのことを深く心配していました。

シャンバーグは帰国後、プランの行方を必死に探してはいたのです。

が、仲間からは賞を獲りたいばかりにプランを置き去りにしてきたと指摘されてしまいます。

シャンバーグの、プランとの友情を裏切ってしまったという苦悩は深刻なものでした。

残ったプランが見た地獄

クメール・ルージュの狂気

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華やかなスポットライトを浴びたシャンバーグとは対照的な運命がプランを待ち構えていました。

原始共産制をとり、文化や文明を徹底的に否定する思想は、プランのように外国語を話すいわゆる文化人へも抹殺の手を伸ばしていました。

彼は外国語が分からない無知な農民を装い、課せられた農作業に毎日でかけます。

その途中で見る光景は狂気そのもの。純粋な子供らは洗脳教育に簡単に染まり、マシンガンを抱えていとも簡単に人を殺していきます。

プランは水田に潜るように姿を隠し、農場を脱出します。

しかし田んぼを抜けたところで見た光景は、道の両側に累々と積まれた半ば白骨化した遺体の山でした。

クメール・ルージュは共産主義を容れない者はもちろん、文化人やちょっとしたミスをした人間まで、単に気に入らない行動をしたことを理由に自国民を殺しまくったのです。

プランはまさに地獄の中を歩き、九死に一生を得ることが出来ました。

映画の後半を占めるプランのクメール・ルージュからの脱出と地獄絵図はこの映画のハイライトといえます。

目を背けたくなるよう光景ですが、これがリアルなカンボジアの実態だったのです。

クメール・ルージュの狂気の実態だったのです。

強烈な映像と巧みな編集はオスカーを受賞していますが、映画の後半においてその実力が遺憾なく発揮されていると指摘できるでしょう。

撮影を担当したのは「マイケル・コリンズ」「愛を読むひと」「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」などで知られる名手、クリス・メンゲスです。

彼のキャメラの技は作品冒頭から光っています。

劇的な再会

地獄からの脱出

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地獄のカンボジアから隣国タイのキャンプに到着出来たプラン。このニュースを手に入れたシャンバーグ記者は急遽タイのキャンプに飛びます。

そして二人は再会を果たします。

シャンバーグはプランに許しを請いますが、プランは、二人は兄弟だといってシャンバーグを責めることはしません。

二人は友情を確認し合うのでした。

そして二人の乗るクルマのラジオからはジョン・レノンの「イマジン」が流れてきたのでした。

1980年、シャンバーグは、この映画の原作となった「The Death and Life of Dith Pran」(ディス・プランの死と生)を著します。

「イマジン」

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映画のラストに流れるのがジョン・レノンの「イマジン」でした。

この曲は、天国なんて無いんだよ、地上から国という意識も宗教も無くなったらどんなにみんなが幸せか想像して、と歌います。

プランの見てきた地獄を、またそれに象徴される今なお世界のどこかで続いている戦争を、さらにシャンバーグとプランの国境を超えた友情を思う時、この曲は実に心に染み入ります。

プラン本人と演じたニョールのその後

プラン役、ハイン・S・ニョールの数奇な運命

Survival in the Killing Fields ペーパーバック – 2003/11/13

カンボジア人ニョールは、医者であり、1975年から4年間実際にクメール・ルージュに捕らえれて過酷な生活を余儀なくされました。

タイへの脱出もプランと重なります。そうした経緯で映画「キリング・フィールド」に素人でありながらキャスティングされたのです。

彼はこの役でオスカーとゴールデン・グローブの助演男優賞を獲得しています。

全く演技経験のない素人がオスカーを獲ったのは同賞史上2人目のことでした。

白骨遺体が山積みの荒野を歩くプランの姿と表情は実際に過酷な運命を背負って生きてきた人物でなければ出せないものなのでしょう。

まさに鬼気迫る「演技」といえます。

ニョールはその後、アメリカへ。映画に数本出たり難民救済活動や講演をしたりしていました。

しかし、彼は1996年ロスアンゼルスの自宅近くでコカイン欲しさの黒人に射殺されてしまいます。

想像を絶する体験をして生き抜き、自由の地アメリカに来たものの、コカイン欲しさの賊に射殺されるとは何という皮肉でしょう。

彼の数奇な運命を思わずにはいられません。

実際のプラン本人のその後

KILLING FIELDS

ニョールが演じたディス・プランというカンボジア人助手は、ほぼ映画と同じような人生を歩みました。

実際にクメール・ルージュに捕らえられて強制労働収容所で囚人のような過酷な生活を4年間送り、タイへと脱出。

その後シャンバーグが働いていたニューヨーク・タイムズで報道写真家として活動します。

一方、カンボジアで起きた出来事を広く知ってもらう運動に精をだしていました。

2008年アメリカの地でガンで亡くなりました。

今なおインドシナ半島は

不安定な国々も

The Killing Fields - Special Edition [Import anglais]

インドシナ半島は植民地時代にフランスやイギリスの支配下となり、その後日本軍の進駐を受け、第二次大戦後民族自決の方向が進みます。

一方で、ドミノ理論から共産化を防ぎたいアメリカ、影響力を行使したい中国など大国の思惑が絡み、ベトナム戦争、カンボジア内戦などを経て民主化が進んだように見えます。

しかし、本作の舞台になったカンボジアを始めミャンマー、ラオスでは依然として不安定さを内包しているのが現状です。

映画「キリング・フィールド」を観る人々に以下のような印象を与えるでしょう。

それは列強・大国の経済繁栄の餌食となった国々の過酷な歴史に、また、その中でこそ育まれた深い友情に想いを致せば、平和への強い希望が生まれる、ということです。