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『愛を読む人』は2008年のアメリカ・ドイツ合作映画です。
ベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」が原作となり、戦後ドイツの在り様を考えさせられる映画となっています。
劇中で、ハンナからの手紙を読まなかったマイケルの心情はどんなものだったのでしょう。
彼は最後になぜ文盲支援に寄付をしたのか。
映画では描かれていない部分ですが、原作を読み解くことでその答えを紐解いていきましょう。
マイケルが手紙を読まなかった理由
服役中のハンナに朗読を送るマイケルですが、なぜ彼女からの手紙は読まなかったのでしょう。
ハンナの変化を認めたくなかった
マイケルの時間は、美しいハンナとの甘い時間のまま止まっています。
劇中でマイケルが象徴しているものは、戦後のドイツ人です。
ハンナが犯した戦犯を受け止められず、正面から向き合おうとしていません。
服役中のハンナに送った朗読が「オデュッセイア」だったことも、時間を止めている証でしょう。
「オデュッセイア」は、甘い時間を過ごした彼らの主軸にあったものなのです。
羞恥心が残っていた
手紙を返さなかったマイケルの心の中は「羞恥心」に支配されていたのではないでしょうか。
- 自分が愛した女性が戦犯にかけられていたこと
- 裁判で罪を感じていない発言をしていたこと
- 自分がハンナの文盲を証言しなかったこと
手紙を送らないという行動は、ハンナと向き合えない姿です。
マイケルは自分がかかわってきた現実から目をそらしているのです。
ハンナとの交流は望んでいなかった
ハンナはマイケルにとって過去の人物であり、隠したい過去ともいえるでしょう。
そもそもマイケルはハンナと交流がしたくて朗読を送ったわけではありません。
彼女からの手紙は不要なものだったのです。
彼の思い付きの行動は、自己中心的な行動といえます。
ではなぜ、マイケルは朗読をハンナに送ったのでしょう。
一方的に朗読を送ったのはなぜか
ハンナからの手紙を返さなかったマイケルは、なぜ朗読を送り続けたのでしょう。
一方的に朗読を送ったマイケルの心情を考察していきます。
自分の為の行為
マイケルはハンナがひとりで罪を背負わされている姿を見ても、当時彼女に手を差し伸べてあげることは出来ませんでした。
何もできなかった自分の罪滅ぼしのために、ハンナへと朗読のテープを送ったのです。
ハンナは喜びましたが、マイケルは自分の罪悪感を消す為だけに送っていたのでしょう。
本当にハンナを思ってのことなら、手紙を返したはずです。
朗読を送ったのは、これ以上傷つきたくないという自己防衛だったのではないでしょうか。
ハンナとの時間を繋ぎ留めておく為
マイケルは「オデュッセイア」を選択しています。