素晴らしいものは、時期など関係なく、どれだけの月日が経っても評価されるべきものだと思わされる内容となっています。
この上映シーンでどれだけ多くの人が心を掴まれたのでしょうか。
初心を忘れ、恋路に走る二人
【赤い靴】で頂点に立ち、初心を忘れてしまう
赤い靴を上演したことで、無名のバレリーナと無名の作曲家は世に名前を轟かせます。
厳しいレルモントフの元で、指導を受けていたからこそ、ヴィクトリアとクラスターは惹かれあったのかもしれません。
お互いに無名の状態で、たった3週間しか時間がないという極限の状況から支え合って大成功を収めたのです。
有名になったことは、もちろんそれぞれの持つ才能や努力のおかげですが、レルモントフが二人を勧誘したことが始まりです。
勧誘し、赤い靴のキャストに選ばれなかったら…という思いは、その頃には二人の中から消え去っていたのかもしれません。
周囲からの評価で完全に自分の夢やレルモントフへの感謝はなくなっていたのでしょう。
失ってから気付く大切な存在
そんな二人はレルモントフの想いも簡単に打ち破り、自分達の恋路へと向かいます。
レルモントフの元から離れ一緒に暮らしだしてから、やっとヴィクトリアは自分の大切なものを思い出します。
恋は盲目という言葉がありますが、まさにその通りで、ヴィクトリアは自分の大切にしていたものを失ってしまったことに気付きます。
ヴィクトリアが眠っていることを確認し、深夜にこっそりとクラスターが弾くピアノを聞いて、バレエのことを思い出します。
クラスターは作曲を続けており、それなりの成果を上げていましたが、ヴィクトリアには何もありませんでした。
もう一度、赤い靴を履いて、あの舞台に立ちたいと思いながら、クラスターに寄り添うのです。
二者択一の結末に潜む現代社会への警鐘とは
恋愛とバレエの両立は不可能だった?
劇団員の誕生日パーティ時に、参加せず二人でデートをしていた際に、クラスターが将来のことを考えます。
もし少女に、幸せだった時のことを聞かれたら、ヴィクトリアと過ごしたことを話すと妄想していました。
そして、少女に驚いてもらう所まで考えていましたが、その将来、隣にヴィクトリアはいないのです。
離れ離れになるとどこかで思っているからこそそういった妄想をしたのではないでしょうか。
レルモントフの劇団を辞めた二人は結婚し、共に過ごしますが、ヴィクトリアは踊らなくなり、クラスターはピアノを弾いています。
恋愛真っ最中の時でもクラスターは自分を見失うことはなかったのです。
ヴィクトリアだけが、クラスターを選んだことで自分の夢への道を閉ざすこととなりました。
そうやって過ごしていくうちにヴィクトリアだけ心にぽっかりと穴が開いてしまっていたのです。
バレエ一本で生きてきたヴィクトリアにとって、恋愛との両立は不可能だったのです。
どちらも欲しがる愚かさと一つを選択するという大切さ
仕事を精一杯頑張りたいという気持ちと、恋人と共に過ごしていきたいという二つの想いを抱えたヴィクトリアでした。