出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07JDK58PB/cinema-notes22
1959年のフランスで公開されるやいなや、その過激すぎる内容ゆえに上映禁止になり、海外輸出も禁止された問題作。
それが今回ご紹介する『危険な関係』です。
フランスの上流階級で何不自由なく暮らす1組の夫婦が主人公で、誰もが羨む様な生活をする裕福な家庭。
しかしその裏には、ゲームの様な恋愛の火遊びに興じる異常な関係が隠されていました。
2人の間で決めたルールに則りうまく関係を続けていた夫婦ですが、ある1つの出会いをきっかけにその関係に綻びが生じ始めるのです。
本作は、かなり生々しい人間の欲望をふんだんに盛り込んだ恋愛映画といえるでしょう。
自由な関係が危険な関係に変わる瞬間はいつだったのか?作品を振り返りながら検証していきます。
誰の主観でこの映画を見るのか
この映画の主人公はヴァルモンではなくジュリエットである
この映画の主人公は夫婦であり、登場人物や複雑に絡み合う関係性が見どころでもあります。
しかし、この映画の本当の意味での主人公は誰なのでしょうか。
物語はヴァルモンの行動を主軸にして展開する為、ヴァルモンが主人公である様に感じられるかもしれません。
しかしこの映画の主人公はジャンヌ・モロー演じる妻のジュリエットです。
ここの主観の取り方を間違えると、映画全体の見方が変わってきてしまいます。
ちなみになぜジュリエットが主人公であるのか。それは冒頭で監督自身がこう語っているからです。
「一方道徳意識の強い女性達は世論と対立せず平等を求めている。仮面をつけ手段も違う。この映画の主役はその種の女性でジャンヌ・モロー演じるジュリエットです。」
引用:危険な関係/配給会社:セテラ・インターナショナル
まずここを押さえた上で、ストーリーを追って解説していきます。
ヴァルモン夫妻の特殊な関係性
羨まれつつも悪い噂も見え隠れする夫婦の姿
場面はある家で行われているパーティー。参加する人たちは主催者である夫妻の噂話に花を咲かせています。
夫は外交官であり女癖の悪いプレイボーイで、片や妻の方は貞淑で模範的な人妻です。
カメラが初めて捉えたその姿は、どこにいても目を引く様な美男子の夫と、シャネルの服に身を包んだ美しい妻。
ヴァルモン夫妻はとても仲が良さそうに2人で語り笑い合っています。
導入部でわかるのが夫であるヴァルモンが自他共に認めるプレイボーイである事です。
しかし妻であるジュリエットも、夫の同僚であるプレバンとよからぬ関係であることがわかります。
そう、2人はお互いの危険な火遊びを容認した上で、しかもその情報を共有し合い楽しんでいるのです。
ここで2人はお互いの情事の事を話し合うのですが、とても楽しそうなのが通常の夫婦にはあり得ない異様さを醸し出しています。
それはまるで悪だくみをする子供がはしゃいでいる様に、お互いがそのことを面白がっているのです。
そして一方では、確かにお互いに対する信頼が見て取れます。
特にジュリエットは、夫を支え夫の男としての自由を容認しさらに自分も自由に振る舞うことで、他人にはマネ出来ないこの特殊な夫婦関係に一種の誇りを抱いているのです。
ヴァルモンもジュリエットもお互いが最高の理解者であり、共犯者であるこの関係に大変満足しています。
ジュリエットの怒りとヴァルモンの不道徳性
ジュリエットは自分が愛人として付き合っていたアメリカ人のコートが、別の女性と婚約した事をヴァルモンから聞かされます。
こともあろうにその相手はヴァルモンの従妹(ヴォランジュ夫人)の娘である若干17歳のセシルでした。
遊んでいたはずの自分が逆に遊ばれていた様な扱いにジュリエットは怒りを覚えます。そして夫にセシルを寝取る様に言うのです。
コートが可愛い生娘だと思い込んでいるセシルを、しかも夫をけしかけて汚してやろうとするジュリエット。