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2015年映画「ルーム」は、母親役のブリー・ラーソンが受賞したアカデミー主演女優賞をはじめ、多くの賞を総なめにしました。
母子2人が小さな部屋で平凡な暮らしを送っていると思いきや、実は7年もの監禁生活を強いられているという驚愕の設定。
監禁からの脱出劇がメインのスリリング映画だろうと予想して観た人は、面食らったことでしょう。
実際に起こった監禁事件を題材にしながら、親子の絆にスポットを当てたヒューマンドラマ。
狭いルームから脱出した先に待っていたのは、果たして希望と呼べるものなのか。
被害者が遭遇する外界からの受難も合わせて、説明していきたいと思います。
モチーフにした監禁事件
映画を観て、こんな残酷な事件はフィクションだろうと思った人も多くいるでしょう。
しかし残念なことに、この映画にはモチーフにした凶悪な監禁事件が存在するのです。簡単に紹介します。
実の父親が監禁「フリッツル事件」
2008年に発覚した、オーストリアの「フリッツル事件」が、「ルーム」のもとになっています。
18歳の実の娘を24年もの間、父親が自宅の地下室に閉じ込め、7人の子供を出産させた事件。
妻は娘がカルト宗教にハマって家出したものと思い込み、この監禁に全く気がつかなかったとのこと。
しかし長きに渡る監禁生活は、異変に気付いた第三者からの通報で幕を閉じました。
18歳だった娘は42歳になり、彼女の楽しいはずの青春は、地下室で過ぎていったのです。
映画「ルーム」の監禁事件
監禁の動機や犯人の目的を知りたがるのが、一般的な観客の心理でしょう。
その期待に応えるように、犯罪をテーマにした多くの映画は、その犯行の過程や目的、解決シーンを提供してくれます。
しかし、映画「ルーム」はその常識を覆しました。
みんなが知りたがるそれらの情報を一切明かさないまま、ラストを迎えるのです。
ただ1つ観客に与えられた情報は、母子が犯人をオールドニックと呼んでいること。
犯人は悪魔
オールドニックとは英語で悪魔を意味します。ですから、これは犯人の名前ではなく、母親ジョイが名付けたのだと判断できます。
監禁暴行した犯人を悪魔だと感じるのは、ごく当たり前のことです。
そんな悪魔の血を引く息子を、これほどまでに愛情を持って育てるにも、相当な心の葛藤があったはずです。
しかし、そんな息子は常に母親の心の拠り所でした。もし息子がいなければ、母親ジョイは発狂していた可能性もあるのですから。
ルームでの暮らし
5歳の息子ジャックにとって、ルームが彼の世界の全てでした。この部屋の外に人も物も無いと教え込まれていたのですから。